第83話 少女たちとの交流
騎士団から戻った僕たちは、早速先ほどの会話内容をコニアさんたちに共有することにした。
しかしどうせ内容を伝えるだけであり、そこに2人も必要ないとのことで、親睦を深めることも目的の1つとして、僕はイヴさんや他の少女たちと別室で待機することになった。
現在広めの部屋には、僕含めて12人おり、僕以外の11人は斡旋所の使用人である少女たちである。年齢は僕より年下に見える子から、20歳前後に見えるミサさんまで様々である。
しかしその誰もが美少女と呼べる存在であり、そんな彼女たちの中に男1人の状況は、なんとも言えない緊張感があった。
とはいえずっと無言というわけにもいかず、何よりもこの場は彼女たちと親交を深めるための場でもあるため、僕は入室してすぐに恐らく最年長であろうミサさんに声をかけた。
「ミサさん、とりあえず皆さんに自己紹介をしてもよろしいでしょうか」
「うん、お願いしてもいいかな?」
「はい!」
大半は好奇心だろうか、様々な色の視線が、僕へと突き刺さる。
そんな中、僕は彼女たちの方を向くと、はっきりとした声で名乗った。
「突然お邪魔してしまって、ごめんなさい。僕はレフト・アルストリア。つい先日、火竜の一撃のメンバーになった新人冒険者です」
火竜の一撃の名はやはり皆知っているようで、僕の言葉に驚愕の表情を浮かべている。
と、ここでミサさんがそれとは別種の驚きに目を見開くと、申し訳なさげに声を上げる。
「えっ……! レフトく……レフト様はお貴族様だったのですか!? あの、タメ口を使ってしまい申し訳ございません」
言って、ミサさんが大きく頭を下げた。僕は慌てて声を上げる。
「あっ、ミサさん顔を上げてください! たしかに僕は貴族ですが、今は火竜の一撃の皆さんと行動をしているだけの、ただの冒険者です! だから今まで通り接してください!」
「ほ、本当に大丈夫ですか?」
「はい! タメ口で全然大丈夫……というよりもむしろそうやって崩した口調で話しかけていただいた方が嬉しいです!」
「な、なら、レフト……くん」
「はい!」
満面の笑みを浮かべる僕を見て、ミサさんはホッとした表情になると、柔らかく微笑んでくれた。と、そんな僕たちのやり取りを見てか、ここで僕よりも年下に見える少女が声を掛けてくる。
「れふとさま?」
「レフトくんの方が嬉しいな」
「れふとくん?」
「うん、よろしくね」
言って僕がニコリと微笑むと、少女はボーッと僕のことを見つめた後、ニッと笑顔を返してくれる。そしてこのことで先ほどまでの緊張がなくなったのか、続けて口を開く。
「れふとくん、あのね」
「どうしたのかな?」
「りゅーちゃんね、おおきくなったられふとくんのおよめさんになる」
「えっ!?」
あまりにも突然すぎる告白に、僕は思わず驚愕の声を上げる。そんな僕の様子に、なにか感じるものがあったのか、少女は瞳をウルウルとさせると、小さく首を傾げた。
「だめ……?」
「いや、ダメじゃないよ!」
「なら……いい?」
「えっとね、りゅーちゃんも僕もまだ子供だから。だから僕たちが大きくなって、それでもまだお嫁さんになりたいって思ってくれるのなら、その時に返事をさせてほしいな」
悩んだ挙句、回答は先延ばし。我ながら最低だとは思うが、彼女は僕より年下であり、恐らくお嫁さんというものをよくわかっていないと思われる。ならば、後回しにして、ひとまずこの場を乗り切ろうという算段である。
そんな僕のやり口が引っ掛かったのか、ミサさんはじめ、年長組がなんとも言えない視線を向けてくるが、僕はそれを見ないようにして、目の前のりゅーちゃんへと向く。
りゅーちゃんはそんな僕の回答に特に思うところはなかったのか「うん、りゅーちゃんはやく大きくなる」と言って頷くと、僕の右腕をギュッと抱きしめ──ここでさらに別の少女が声をかけてくる。
「あの、レフトくん……」
「は、はい、どうしましたか」
「あの……もしよかったらなんですけど……」
「……? はい……」
「か、髪を触らせてもらうことってできますか?」
「髪……ですか? はい、大丈夫ですよ」
「やった! で、では──」
少女は小さくガッツポーズをすると、恐る恐るこちらへと手を伸ばし……優しく僕の髪へと触れてくる。
「ふぁ。すごい、やっぱりふわふわだ!」
少女は驚きに目を見開いた後、更に優しく触れてくる。
普段から頭を触られることは多々あるが、大抵はヘリオさんやグラジオラスさんによる荒々しいものが多い。もちろんマユウさんやリアトリスさんも撫でてくれるが、今回の触り方はなんというか、それとは別種の柔らかい触れ方であり、なんともこそばゆい。
「りゅーちゃんもさわる」
しかしそんな僕の内情をよそに、右腕に絡みついていたりゅーちゃんも僕の髪に触れてくる。
そんな2人の姿を目にして、僕が安心して接することのできる人間だと判断したのか、今までチラチラとこっちを見ていただけの他の少女たちも、僕に近づいてくる。
そしてそれぞれが僕に触っていいか聞いてきたあと、恐る恐る髪に触れてきた。
……と、そんな感じでいつのまにか少女たちに揉みくちゃにされ、流石にやりすぎじゃないかとミサさんがオロオロするという中々カオスな場にはなったが、とはいえ少女たちの僕に対する警戒心はなくなり、なんとか仲良く? なることができた。
──ちなみに、イヴさんも最初は相変わらず警戒をしていたが、最終的には好奇心が勝ったのか、僕の髪に触れてきていた。……まぁ、なんにせよとりあえず一歩前進である。
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