第50話 もう一つの可能性とリアトリスの帰宅
条件は一体何か。
魔物の森からの帰り際にそう考えていると、ここで登録できない理由について、もう1つの可能性がある事に気がつく。
「マユウさん」
「ん」
「今ふと思ったんですけど、ギフトのレベルが足りないから、魔物の登録に制限がかかっているという可能性は考えられませんか?」
僕の言葉に、マユウさんは一度僕と視線を合わせた後、再び進行方向へと戻し、
「……あぁ、ごめんね。その可能性は私の中で勝手に排除していた」
「何か理由があるんですよね」
「ん」
言ってマユウさん小さく口を開く。
「ギフトにおける能力の制限は基本的に2つ。1つがギフトのレベルによる制限。もう1つが消費魔力による制限」
僕はうんと頷く。
マユウさんは話を続ける。
「例えば私の場合、ギフトレベルの向上により使える魔術が増える。そして便利な魔術になればなる程、その消費魔力は格段に向上する」
「俺も同じだな! ギフトレベルで使える技の数が増えて、強い技程消費魔力が大きい!」
グラジオラスさんの声に、マユウさんが同意を示す
「ん。確かにレフトは特殊なケースだから、もしかしたら例外があるかもしれない。けれど、レフトにはまず植物に直接触れ、図鑑に登録する必要があるという制限、実体化における消費魔力による制限の2つがある。その上、ギフトレベルによって使える能力にも制限がかかっている」
一拍空け、
「私は、ここに更にギフトレベルによる登録できる魔物の種類に対する制限がかかってくるとはどうしても思えない」
マユウさんの声に、ヘリオさんは思い起こす様に一瞬視線を宙に向け、
「確かに俺もユニークだが、制御が難しい事を除けば制限はギフトレベルと消費魔力だけだな」
「ん。あとそもそも、仮に低レベルの内に強力な魔物を登録出来たとしても、どうせ魔力量が足りなくて実体化できない。それなのに態々登録できる魔物数に制限をかける? とも思った」
僕はうんと頷き、再びマユウさんが続ける。
「あともう1つ。ギフトのレベルが上がった時、新たな能力を知覚したよね」
「はい。実体化した植物を収納できる……という事を漠然と」
「ん。例えば私の場合、ギフトレベルが上がると新しい魔術が使用できる事を知覚する」
「……! なる程!」
ここで僕はマユウさんの言いたい事を理解する。マユウさんは小さく微笑み、
「そう。仮にギフトレベルによる登録制限があるのならば、ギフトレベルが上がった際に、どこまで登録できるのかある程度知覚できるはず」
「確かにそうだな!」
ガハハと笑うグラジオラスさんへチラと視線を向けた後、再び視線を僕の方へと戻す。
「……殆どが私の勝手な考察。けど、あながち間違ってはいないと思う」
言葉の後、視線を落とし、
「それでも、勝手に可能性を除去するのはダメだよね。ごめんね、レフト」
「いえ! それだけ考えて下さっての事ならば、全然問題無いです!」
「ん、ありがとう。でもとりあえずギフトレベルによる制限の可能性もゼロとは言えないし、心に留めておこうか」
「はい! 次にレベルが上がって、何かしらありそうならまた報告しますね!」
「ん、わかった」
マユウさんが頷き、僕達は街へと戻っていった。
◇
街に到着した僕達は一度部屋へと戻った。
各々好きに過ごし、おおよそ1時間程経過した頃、隣の部屋からマユウさんとは違う女性の声が聞こえてきた。
「お、終わったか」
ヘリオさんの言葉を受け、僕は部屋を出た。
すると視線の先に、膝を落とし、力無くマユウさんに抱きつくリアトリスさんの姿が。
……どうしたんだろう。
そう思いながら、とりあえず様子を窺っていると、
「マユウーつーかーれーたーよぉぉぉぉ。魔力も空っぽだからだるいしぃぃ」
という声が聞こえてくる。
そんなリアトリスさんに、マユウさんは「よしよし。リア、よく頑張ったね」と言いながら頭を撫でている。
……見なかった事にした方が良いかな。
と思いながら、ひとまず部屋へと戻ろうとすると、ここでマユウさんがこちらに気づいた様で、
「ん、レフ──」
「レッフちゃん…………ッ!?」
マユウさんが言い切るよりも早く、先程までのぐでんとした姿からは想像できない程のスピードで、リアトリスさんの視線がこちらへと向く。
そして──
「……うぶっ」
数瞬の後、僕の顔はいつもの様にリアトリスさんの豊かな双丘に埋まってしまうのであった。
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