第43話 リアトリス、マユウとテント泊
食事が終わり、ある程度のんびりとした所で、翌日の事を考えもう寝る事となった。
今回の野宿では、普段火竜の一撃の皆さんが使用している同種類のテント2つを使用する。
あらかじめ設置しておいた事もあってか、あっという間に睡眠の準備が整った為、
「うし、んじゃまた明日な」
というヘリオさんの声の後、皆さんは男女別にテントへと入っていく。
僕もそんな皆さんに倣い、ごく当たり前の様に男側のテントに近づき──
「レフちゃーん! レフちゃんはこっちだよー」
「…………へ?」
突如リアトリスさんの声が聞こえてくる。
その想定外の内容に驚きつつヘリオさんの方へと視線を向けると、ヘリオさんは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべ、
「すまんな、レフト。こっちに3人はちょいとキツイんだ。……ほら、ジオがデカイだろ?」
「ガハハ! すまんな!」
確かに外観ではかなり大きいと思ったテントも、ヘリオさんとグラジオラスさんが入るとそこまで余裕がない様に見える。
「レフト、おいで」
マユウさんの呼ぶ声も聞こえてくる。
……仕方が無いか。
「はい、今行きます!」
少々戸惑いもあるが、致し方が無いと僕は女性側のテントへと近づく。
そして遂に入口の前までやってきた所で、僕はごく当たり前の様に中に入ろうと手を掛け──ここで僕は妙な緊張を覚える。
……何だろう、2人とはかなり親密な仲になった筈なのに、例えば女湯の様な秘密の花園に飛び込むかの様な妙な緊張感があるな。
恐らく寝室という認識がそうさせるのであろう。
僕は早鐘を打つ鼓動をふぅと息を吐き落ち着けた後、ゆっくりと入口の布を取り払いつつ声を上げ──
「おじゃましま……」
──そこには寝巻きなのか、ラフな服に身を包んだ2人の姿があった。
床にちょこんと座りながら、こちらへと視線を向けている。
「ようこそ、レフト」
言って微笑むマユウさん。その姿が何故かいつもよりも妖美に見えて──
……んー、大丈夫かな?
と、僕は無事に就寝できるのかと少しだけ不安を覚えた。
◇
テントの中には不思議と甘く良い匂いが漂っている。更には魔道具だろうか、心の落ち着く色合いの光が、中央で淡く輝き、2人の姿を妖しく照らす。
そんなテント内の様子のせいか、僕は謎の緊張を覚える。
が、だからといってその場で固まっていては心配を掛けてしまう為、そのまま2人に従い空いたスペースへと腰掛ける。3人を線で結べば正三角形が出来るであろう位置取りである。
──と。
「…………っ!」
僕が座った途端、2人がグイッとこちらへと近づき……正三角形が小さくなる。
キョロキョロと2人の様子を伺う。
環境のせいだろうか、視線に映る2人の雰囲気が、何やらいつもと違う様に見える。
と、ここでリアトリスさんが囁く様に声を上げる。
「レフちゃん眠たい?」
「い、いえ、特にまだ……」
「なら──」
ゴクリと息を飲む僕。そんな僕に向け、リアトリスさんはニコリと微笑み──
「──3人でお話しようか!」
声を抑えつつも、いつもの調子で声を上げた。
……よ、良かった。勘違いだったみたいだ。
思い、僕はホッとした様子で、
「……はい!」
「なんの話する?」
言って首を傾げるマユウさん。しかし何となくとある言葉が発せられるのを期待している様な雰囲気が感じられる。
そんなマユウさんの期待の視線を受けながら、リアトリスさんは含みを持たせたわざとらしい笑みを浮かべると、
「ふっふっふ、女の子、寝室、夜ときたらこれしかないわ!」
……僕、男の子だよ?
と心の中で思いながら、リアトリスさんの言葉を待つ。
リアトリスさんはたっぷりと間を取った後、ピンと人差し指を立て、ニッと真白く整った歯を覗かせながら微笑み、
「……恋バナよっ!」
と高らかに声を上げた。
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