第33話 ライムのステータスと収納

「…………ん?」


 あの後、再度図鑑に目をやった所、ライム(グリーンスライム)の名の下に、ステータスという文字があるのが目に入る。


 まさかと思い、一度ライムをベッドの上に置いた後、その文字に触れてみる。


 すると、突如として半透明の板状のものが浮かんできた。


「おぉ、僕達のステータスと同じだ」


 僕がステータスを見る時と同様のものが浮かんだ事に少々驚きつつ、目を通す。


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 ライム(グリーンスライム)


 ランク F

 体力 2/2

 魔力 3/3


【スキル】


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 そこには僕達のものとは違い、レベルの代わりにランクが、ギフトの代わりにスキルが記されている。


 しかしそれにしても──


「かなり弱いな」


 体力魔力共に1桁前半な上に、頼みのスキルも1つも無い。

 てっきり『消化(植物)』の様なスキルがあるのかと思ったが、あれは生命活動の一環であり、スキルでは無いと判断されたのか。


 とは言え、この弱さもある意味では仕方がないと言える。何故ならライムは最弱の部類に入るグリーンスライムなのだから。


 しかし、これでは魔物と戦わせる事など当然できない。故に現状ライムにできる事が何も無く、ただのペットとして扱う他無くなってしまう。


「……どうしようね、ライム」


 ベッドの上で呑気にうにょうにょと動くライム。その様はまるで幼児が好奇心のままに遊び回っている様で、


「……ま、いいか」


 その可愛さに、ひとまずはペットで良いかと、僕は思った。


 ◇


 その後楽しげに動き回る──とは言ってもかなりのスローペースであるが──ライムの姿を眺めていると、ここでふと疑問を覚える。


 ……そういえば、魔物も植物の様に収納できるのだろうか? と。


 収納。それはギフトのレベルがⅠになった際に発現した能力で、その名の通り、一度実体化した植物を図鑑に戻す事ができるというものである。

 そしてどうやら収納した植物は時間の経過が止まっているのか、一切枯れる事が無い。


 確かに今までは実体化したらそのまま放置となっていた事を考えれば、収納は有用な能力と言える。


 しかし収納には、一度実体化した植物を収納し、再度実体化した際、初期消費と同量の魔力を消費してしまうという問題がある。


 これでは例えば、1日の終わりに魔力が尽きるギリギリまで植物を実体化し、収納。これを繰り返し大量に植物を溜め込み、纏めて火竜の一撃の皆さんに納める……といった事ができず、納められるのはその日の魔力総量分のみとなる。

 故にそこまで大量のお金を稼ぐ事ができないというのが現状である。


 加えて、例え収納したからといえ、そこから取り出せるのは1度に1つのみ。

 つまりは、新たに実体化するのと収納したものを実体化するのでは、これといった違いが無いのである。


 ……とまぁそんな感じで、現状戦闘に使ったカラミヅルや爆裂草を邪魔にならない様に収納した以外は、これと言った使い道を見つけられていない。


 そんなある意味では不便とも言える収納であるが、これがもし魔物を収納──生物相手に言い方が悪いが──できるとなれば話は変わってくる。

 例えば、通常では魔物を連れて行けない場所にも、連れて行く事ができる様になるのである。


 確かにライムは手のひらサイズであるのに加え無害である事から、大抵の場所には連れていける。

 しかし今後、仮に大きな植物型魔物を登録できた際、一度実体化したまま収納出来ないとなれば、色々と困る事になる。

 故に、できれば収納可能であって欲しいが……。


「ライム」


 名を呼ぶと「なーにー」とばかりにふるふると震える。


「一度植物図鑑に戻せるか試してみたいんだ。良いかな」


 ライムが肯定とばかりにうにゅうにゅと触手を伸ばす。それを確認した僕はうんと頷くと、


「よし、戻れ!」


 必要の無い掛け声と共に念じた。

 すると数瞬の後、ライムの身体が光になったかと思うと、植物図鑑に吸い込まれていく。


「おお、できた。なら次は──おいでライム!」


 言って念じると、再び植物図鑑が輝き、ライムが僕の手のひらの上に現れた。


「一応確認するけど、ライムだよね?」


 流石に名前が登録されている為大丈夫だと思うが、収納し実体化すると別のグリーンスライムになってしまっている……とかそんな事は無いかと問うと、


「らいむだよー」とばかりにうにゅうにゅと触手を伸ばしてきた。

 僕は安堵の息を吐く。


「よかった。それでどうだった? 収納後の世界は」


 僕の言葉にライムはふるふると動く。が、会話ができない現状、流石にその動きだけではどんな場所かは伝わらない。

 とは言え、ライムからパスを通して流れてくる感情が楽しげであった事から、少なくとも辛い環境では無かったのだろう。


「これからもたまに向こうに行ってもらう事になるけど、大丈夫かな?」


 ライムは肯定とばかりに触手を伸ばす。


「よし」


 これでとりあえず魔物の収納に問題がない事が判明した。


 ……因みに魔物に関しても、収納から実体化した際に通常の実体化と同量の魔力消費が見られた。

 やはりここは単なる植物と何ら変わりはない様である。

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