第24話 vsフォレストゴブリン×2

 ……さて、どう来る。


 徐々にゴブリンとの距離が近づく中で、僕は頭を悩ませる。


 たかがゴブリンと言えども、相手の数が1体と2体とではその難度が違う。


 今までの様に1体が相手の時は、そのゴブリンだけに注力すれば良く、故に相手の行動が読みやすい。

 しかし2体ともなれば、その両方の行動に注意を向けなければならず、またその2体が連携して攻撃してくるとなれば、相手の付け入る隙が少なくなってしまう。


 仮に、魔術のギフト持ちであれば、遠距離で対処できる事から、複数体相手でも何ら問題は無いのかもしれない。

 しかし、近距離でなおかつギフト無しで戦わなくてはならない僕にとっては、やはりどうしても難度が跳ね上がってしまう。


 ……まぁ、それでも常時遠距離攻撃をしてくる様なゴブリンがいないだけでだいぶマシだけど。


 今回相手をするゴブリンのメイン武器は、2体とも錆だらけで切れ味が悪そうなショートソードである。

 仮に冒険者から奪ったものならば──流石に金属製の剣を自作は難しい筈なので、十中八九奪ったものであるが──自然の摂理と言えど少々胸糞悪さがある。


 ……とりあえず元の持ち主の敵討ちを。


 どこの誰かもわからない人間相手に、勝手な正義感でそんな事を思いながら、僕は目前に迫ったゴブリンに軽くショートソードを振り下ろした。


 ゴブリンの反応が遅れ、袈裟斬りの如く左肩から右胴にかけて浅く攻撃が通る。


 と同時に、別のゴブリンが右方から切り掛かってくるのが目に入るが、事前にそれを把握していた僕は、切った勢いのまま前方のゴブリンの脇をすり抜ける。


 ……ヒットアンドアウェイだと少々分が悪いか。


 数的有利が向こうにある以上、攻撃を仕掛けた後に離れ過ぎると向こうに再び連携を取る余裕を与えてしまう。

 時間が経過すると共に、疲れが出て必然的に僕の動きが鈍くなる事を考えると、連携を取る余裕を与えるのは間違い無く悪手であろう。


 ……ここは、攻めの一手だ。


 幸いにも、僕のレベルが上がった事と、フォレストゴブリンの身体能力が通常のゴブリンよりも低い事から、ある程度の余裕を持って対処できている。


 ならば──


 袈裟斬りをしたゴブリンが振り向こうとする。


 先程右方にいたゴブリンとの距離はそこそこあり、向こうの攻撃を心配する必要が無い事から、僕は先程よりも強気でゴブリンの首元へとショートソードを一閃する。


 ──ゴブリンの対応は間に合わない。


 僕の攻撃は通り、袈裟斬りしたゴブリンの頭が胴体と分かれ──光となって霧散した。


 ……よし、まずは一体。


 仮に二対一の場合、こちらを有利にする為には1体を倒し、一対一の状況を作り出すのが最善である。

 そして仮にその状況を作り出せ、かつ相手が戦いなれたゴブリンであった場合、例え戦地が向こうに分がある森の中だったとしても、最早こっちのものである。


 残り1体となったゴブリンがショートソードを振り下ろす。


 僕はそのゴブリンの攻撃を余裕を持って躱した。


 ──その後は、焦らず冷静にヒットアンドアウェイを守りつつ攻撃を仕掛け、数十秒後、僕の攻撃によってもう一体のゴブリンも光となって霧散した。


「…………ふぅ」


 初めての2体のゴブリンとの戦闘は、結果僕の快勝で終わった。

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