第21話 有用植物の入手に向けて
翌日、早速ヘリオさん達の元へ赴く。
いつも通りリアトリスさんの熱烈な歓迎を受けた後、僕は皆さんにギフトを戦闘に利用したい事、利用できそうでかつ街周辺で手に入る2種類の植物をピックアップするも、具体的な生育地がわからない事を伝えた。
「植物を戦闘に利用な。良いんじゃねぇか」
「だな!」
「中々面白い」
言ってマユウさんがコクリと頷く。
「確かに、右手に実体化できるレフちゃんだからこそ使える植物もありそう! ユニークギフトならではの技、オリジナルだね!」
言ってリアトリスさんは僕の右手をギュッと握る。相変わらずスキンシップが多い。
それにしても皆さんの反応は上々だ。
トップ冒険者の好意的な反応に少し嬉しく思っていると、ヘリオさんが口を開く。
「……んで? レフトは何の植物が欲しいんだ?」
「カラミヅルと爆裂草です」
僕がそれらを戦闘に利用している様を想像したのか、ヘリオさんは顎に手を当て、視線を少し上に向けながら、
「はー……なるほどな。確かに利用できそうだ」
「皆さんは具体的な生育地ってわかりますか」
「おう、わかるぜ」
ヘリオさんの言葉に皆さんが頷く。
「本当ですか!」
ヘリオさんが視線をマユウさんに向ける。こう言った説明はマユウさんが適任なんだろうか。
マユウさんが口を開く。
「ん。ゴブリ草原を少し行った所にある魔物の森、その入り口付近にどっちもある」
「魔物の森……」
──その名は幾度となく耳にした事がある。
隣国の一つ、グロリオーサ帝国との国境付近に存在する広大な森である。
奥に行けば行く程、並の人間では到底敵わない程危険な魔物が多数生息している。故に生きて抜ける事は不可能とされ、帝国との間で戦争が起こらない要因とも言われている。
それ程までに危険な場所である事から、僕らの街では、昔から数多の御伽噺の中で、恐ろしい場所として描かれている。その為、親が子を叱る際に「言う事を聞かないと魔物の森に連れていく」という文言を利用する事もしばしばであり、魔物の森を恐怖の象徴と捉えている子供には効果絶大だという。
と、そうした話を知っているからこそ、魔物の森という名称に少し怖気付いてしまう。そんな僕に、マユウさんが優しい口調で、
「大丈夫。魔物の森と言っても、入り口付近ならゴブリ草原と同レベルの魔物しかいない」
「そうね。何度か入った事があるけれど、1キロ程度ならレフちゃんでも危険は無いと思うわ。……勿論、私達と一緒ならね」
と言った後、リアトリスさんは少し落ち込んだ様子で、
「……レフちゃんは今日探しに行きたいんだよね?」
「あ、はい。勿論、皆さんに余裕があればですけど」
「そうよね。……うぅ」
「リアトリスさん?」
「ははっ。すまんなレフト。今日はマユウ以外用があってな、ついていけないんだ」
「そうなの。どうしても外せない用なの……うぅ」
がくりと肩を落とすリアトリスさん。同時に僕を抱く力が少し強くなる。
そんな彼女へとマユウさんが相変わらずの感情の読み取りにくい視線を向ける。
「リア」
「……なによ」
顔を上げるリアトリスさん。マユウさんは一拍開けると、
「私が責任を持ってお姉ちゃんをする。だから安心して」
言って勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
「うわぁぁぁぁん」
僕の背中へと顔を埋めるリアトリスさん。そんな彼女を他所に、マユウさんは僕へと視線を向けると、
「……という事で、今日は私が付き添う。よろしくね」
「は、はい! よろしくお願いします!」
目に見えて落ち込むリアトリスさん、苦笑いのヘリオさん、相変わらずガハハと笑うグラジオラスさんに、嬉しそうなマユウさん。
三者三様の表情と共に、マユウさん付き添いの元、魔物の森に行く事が決定した。
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