第20話 植物の知識

 あの後2人に協力して貰いながらゴブリンと闘い、レベルが3になった所でお礼を言い帰宅した。


 帰宅後、いつも通り夕食をとりながら家族との団欒の時間を楽しんだ後、湯浴みをし、自室へと戻る。


 そして一目散にベッドへと向かうと、その上で胡座をかき、腕を組みながらうーんと悩む。


 ──そう、今後の戦い方についてである。


「……どうしようかなぁ」


 と呟きつつ、先程のゴブリン戦を思い出す。


 今回、僕はゴブリン1体を相手に危なげなく勝てた。確かに小さな擦り傷をつけられたりはしたが、これはHPが変動しない程の傷であり、全く問題は無いと言える。


 では、そんなゴブリンを相手に、剣術Iのギフト持ちが対峙した場合どうなるか。

 恐らく、ゴブリン3体を相手に、傷一つつけられる事なく勝利するであろう。


 ──それ程、ギフトを有しているか否かは大きな差異を生む。


 そしてこれは同様に職──今回は特に戦闘職──についても言える。


 例えば、貴族の特に長男と次男はまず学園に通い、卒業後に王国騎士団か王国魔術師団への入団を目指す。

 そこで力をつけつつ、街の運営についても学び、最終的には実家の跡を継ぐ事となる。

 三男以降は後継となる事はそうそうないが、それでも基本は騎士団か魔術師団への入団を目指すのが一般的だ。


 対して一般市民はどうか。一般市民の場合は学園に通い、優秀な成績を収め、騎士団や魔術師団への入団を果たすのが成功の道と言われている。

 しかしその倍率は非常に高く、大半の者は雑兵として騎士団や魔術師団の下で働くか、自由と成功を求めて冒険者となる場合が多い。


 中には学園に通わず幼い頃から冒険者として生きる者も居るが、こういった人は余程強力なギフトを有しているか、賢い者で無ければ早々に死ぬ事となる。


 ……と、様々な道、様々な戦闘職があるが、全てに共通している事がある。


 それはこれらの職につく人間は、その殆どが戦闘系のギフトを有し、それを活用しながら戦っているという事である。


 ……となると、戦闘系かどうかは置いておいて、僕もギフトを有効活用して戦うのが良いんだろうけど──


 しかし、現状図鑑に載っている植物では多少の回復には役立てど、とても戦闘に利用できるとは思えない。


 何か有用な植物は無いか。


 うーんと考えるも、浮かぶのは能力の実の様な現状入手不可能な植物ばかりである。

 またいくら習い事の中で学ぶ事があったと言っても、所詮学園入学前の児童レベル。故にそもそも植物の知識が少なく、戦闘に使えそうな植物などてんで思い浮かばない。


 ……となれば、まずは──


「よし、まずは知識をつけよう」


 僕はそう思いうんと頷いた後、急いでお父様の元へ向かい、今回の件について相談した。

 すると、お父様がちょうど先代つまり僕のお爺様の所有していた本があるとの事なので、用意してもらう。


「大事に使うんだぞ」

「はい!」


 古びた、しかしかなりしっかりとした厚手の本をお父様から受け取り、自室へと戻る。


 そして再びベッドの上で胡座をかき、その本をペラペラと捲っていく。

 その中には、僕が住むネモフィエラ王国に存在する植物について、手書きのイラストと共に説明が記されていた。


 思いの外詳しいそれに僕は驚きつつ、一つ一つ説明に目を通していく。


 10歳の僕からすればかなり難しい文章ではあったが、時折「ほー」や「なるほど」と呟きながら必死に読み進める事数時間。


 僕はパタンと本を閉じた。

 そして興奮で目を輝かせる。


 ……これはかなり幅が広がるかもしれない!


 本の中に幾つか戦闘に応用できそうな植物が見つかった。

 大抵はそう簡単に入手できないものだが、その内の2種類はどうやらこの近辺で採取可能であるらしい。

 加えて、この2種類はかなり使い勝手が良さそうであり、上手くはまれば今後の魔物との戦いが幾分か楽になると言える。


 ──よし! 早速入手して検証してみよう!


 僕は興奮冷めやらぬまま、1人グッと拳を握った。

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