第16話 火竜の一撃のアルストリア家訪問に向けて

 あの後、次回の依頼についてミーティングを行うというのでそれを見学。それが終わってからは、1時間程度雑談をしたりしながら過ごした。


 そしてそろそろ帰ろうかという所で、ヘリオさんが、


「レフト。両親の説得、俺も手伝うぜ」


 と言ってくれる。


 確かにヘリオさんが居た方が心強いのは間違い無い。しかし、あまり迷惑を掛け過ぎてもいけない、自分でできる事は自分でやらなきゃと考え、一度は断ろうと考えるも、


「貴族との繋がりを持てるのは、俺達にとってもメリットなんだぜ」


 というヘリオさんの言葉を受け、双方にメリットがあるならばとお願いする事にする。

 因みにこの時、僕が貴族である事を知らなかったマユウさんとグラジオラスさんは心底驚いた様子であった。


 確かに、以前ヘリオさんとリアトリスさんには家まで送ってもらった際に伝えたが、マユウさん達には伝えてなかったなと思い、2人に向け僕が貴族である事を伝える。


 もしこれで近寄り難いと思われたらどうしよう……とも考えたが、


「……身なりが整っているとは思っていたけど、まさか貴族とは思わなかった」

「そう言われりゃ、レフトには俺には無い上品さがあるな! 貴族というのも納得だ!」


 と想定外という反応ではあったものの、結果2人の態度は全く変わる事は無かった。


 先に伝えていたヘリオさん、リアトリスさんの時もそうであったが、貴族だからと変に口調を変えたりはせず、寧ろ「レフトはレフトだろ?」とばかりに、こうして変わらず対等な関係で接してくれる火竜の一撃の存在は、僕にとって凄くありがたいものであった。


 と、そんな感じでお父様達の説得を、火竜の一撃の皆さんが手伝ってくれる事になった。


 とは言え、勿論今からでは無い。お父様もお母様も貴族としての仕事に追われている為、前もって皆さんの訪問を伝える必要があるからである。


 僕は皆さんに後日訪問日を伝える事を話し、帰宅した。──リアトリスさんと手を繋ぎながら。


 その後リアトリスさんと別れ、家へと戻った僕は日課である習い事に取り組む。それが終わり、夕食の時間になった所で、2人に火竜の一撃の皆さんをうちに招きたいと伝える。


 毎日その日の出来事を話したりしていた為、ある程度良い関係である事は理解していた筈だが、まさか家に招く程の仲とは思っていなかった様で、2人は驚いた様子であった。

 しかし、貴族間でも度々話題に上がる火竜の一撃の事が純粋に気になったのか、訪問を了承してくれた。


 この時にはレベル上げ等説得に関する事は伝えておらず、あくまでも仲良くなった火竜の一撃の面々を家に招く事がメインとなっている。


 レベル上げ等の話題は当日、みんなが揃い、ある程度打ち解けた所で初めて伝える。それが説得の場としては最善であり、前々から話す事では無いと思ったからである。


 ただ何となくではあるが、この時お父様達は当日何かあるのだろうと、そう察していた様に思う。しかしそれでも、こちらの真意を探ったりはせず、快く了承してくれた2人には本当に感謝しかなかった。


 翌日、早速僕はいつもの会議室を訪れ、火竜の一撃の面々に2日後に訪問の場が設定された事を伝える。

 前もって空いている日を彼らに聞いていたというのもあるが、特別問題も無く、皆さんは了承してくれた。


 その後は「レフちゃん、暇なら一緒にお話しよ?」とリアトリスさんに誘われ、結局この日も皆さんと一緒に雑談をして過ごした。


 その中で、僕のギフト、植物図鑑について話す機会があったので、ついでという訳ではないが、能力説明の一環として、クリスタルフラワーを実体化。

 これがクリスタルフラワーの初実体化の機会であった為、そもそも実体化できるかと不安はあったが、しかし別段問題無く実体化できた。そして同時にクリスタルフラワーの消費魔力が100である事が判明した。


 想定通りであったが、想定通りであった為に「早い内に魔力総量を増やさなきゃな」と僕は改めて思った。


 と、そんな事もありつつあっという間に時は過ぎ、2日後。火竜の一撃の訪問日がやってきた。

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