第14話 成長の限界

 さて……。


 実体化と検証を終え、ふーっと一息吐いた後、僕は今回の結果を振り返る。


 まず、実体化に伴う消費魔力に関してだが、こちらは概ね想定通りであった。

 勿論完璧に予想通りとはいかず、例えば中級薬草なんかは想定以上に消費魔力が大きいという結果になってしまったが、それでも何とか許容範囲には収まっている。


 しかしだからこそ思ってしまう。


「……このままじゃ、成長は見込めないなぁ」


 現在の魔力量は、中級薬草2束を実体化するだけでほぼほぼ尽きる程度である。確かに中級薬草は貴重な品ではあるが、それでもたかが2束ではとてもじゃないが需要は満たせない。


 またクリスタルフラワーが現在実体化できるおおよその限界である事、実体化の消費魔力が購入金額の比に概ね準拠している事を考えれば、今後仮にそれ以上に高価で貴重な植物が手に入っても、宝の持ち腐れとなってしまう。


 そんな状況では、どう考えても大成など夢のまた夢である。


 となればどうするべきか。


 当然であるが、足りないのならば魔力総量を増やしてしまえば良い。


 しかし、その為には──


「レベル上げ……かぁ」


 そう、魔力量はレベル依存であり、レベルの上昇でしかその総量を増やす事は叶わない。──例外として魔力の実という、食べるだけで魔力総量が増える実が存在するが、これは伝説級の実であり、その流通量は国全体で年に1つあるかどうかという希少さの為、基本無いものと考えている。


 つまり、ここで停滞しない為には、魔力総量を増やす為にレベルを上げる必要があり、その為には魔物を討伐するしか無いのである。


 とは言え、そう簡単な話では無い。


 というのも、そもそも僕は武器を扱った事など日々の学習の中でしか無く、当然実践経験などただの一度も無い。

 また仮にギフトが戦闘特化のものであれば、多少は何とかなったのかもしれないが、現状植物図鑑は戦闘にはてんで向かない。


 いや、そもそもそれ以前の問題で、僕が街の外に出る許可をお父様達は出さないだろう。


 ──問題はそれだけでは無い。資金調達の問題もある。


 今後植物を手に入れる上で、資金力は欠かす事ができない。


 ならば有用な植物を大量に実体化して売却すれば……と考えるも、これは不可能である。


 確かに先日、冒険者ギルドの方で下級薬草を大量に売却できた。しかしあれは初回だったからできた事であり、今後毎日の様に大量の植物を売却すれば「どこから入手したんだ?」と怪しまれる事間違いなしである。


 かと言って、お父様に売却をお願いするのもあまりよろしく無い。植物とは何の縁も無かった貴族が、突如大量の植物を定期的に売却しているとなれば、売却先に出所を疑われる事になりかねないからだ。


 つまりは現状、能力の成長という面では八方塞がりの状況なのである。


 ……そしてこの状況を打破する為には、どちらにしても外部に協力者が必要となる。


 それも、植物を定期的に売っても何ら怪しまれない、もしくはある程度の戦闘力を有している協力者が。


 ……と、ここで僕の脳内に火竜の一撃の皆さんの顔が思い浮かぶ。


 前回、皆さんはいつでも遊びに来て良いと言っていた。

 ならば、まずは協力をお願いするのでは無く、ひとまず何か良い方法がないか相談しに行ってみよう。


 僕は1人そう考えると、うんと頷いた。

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