朗報じゃ
それからというもの、僕はピエールさんと一緒にクエストを受けたり、特訓をしたりして過ごしていたんだ。そこで強いモンスターとも戦い……少しずつだけれど、確かに僕らは強くなっていったんだ。
──
そんなある日……僕の部屋を訪ねてくる人物が1人。
「アルーおるかー?」
「いっ、いません!」
「よし、おるな!」
僕の存在を確認するなり、ミミルさんは僕の部屋にズカズカと入って来た。
「ちょ、ミミルさん! せめて僕が扉を開けてから入って来てくださいよ! もし僕が変な事してたいたら、どうするんですか!」
「するのか?」
「……えっ?」
その言葉に僕は一瞬固まった……そしてミミルさんは吐き捨てるように言う。
「たわけ。お主の性事情など知った事ではない」
「あなたが聞いてきたんでしょ……」
というか性事情とか言ってるよこの人……
一方でミミルさんは椅子にちょこんと座って「前置きはこのくらいにしてじゃな」と悪戯っぽく笑い……続けてこう言ったのだった。
「アル、朗報じゃ。勇者に会える事になったぞ」
「えっ!?」
「何っ!?」
横になって寝ていたシンも飛び起きて、ミミルさんの元に急いで駆けていく。
「本当か!?」
「うむ……それも今日じゃ」
「今日!?」
「えぇっ!?」
突然知らされた出来事に僕とシンは大きく慌てふためく。そんな中、ミミルさんは冷静に。
「それでウチとその勇者の知り合いも一緒に、勇者の住む場所へとついて行くから……ギルド前の馬車乗り場に集合するのじゃ。これからすぐに向かうから、早く準備するんじゃよ」
「え、どこですかそれ!」
僕の質問には答えず、ミミルさんこの場から立ち去ろうとする……時にシンが引き止めた。
「あ、待てチビっ子」
「チビっ子言うでない……なんじゃ」
「……俺の正体は絶対に誰にも言わないでくれよ」
「そんなの分かっておる」
言ってミミルさんは去って行った。
……どうしてシンは正体を隠そうとするんだろう。いくら人にバレたくないからって、勇者様にまで隠そうとするなんて……
気になった僕はシンに問いかけるのだった。
「どうして? せっかく勇者様と再会出来るのに……」
「だからだよ。せっかく会えるからこそ、アイツには何も思い出してほしくねぇんだよ」
「……」
今の僕にはその考えがあまり理解出来なかったけれど、きっとシンなりの考えがあるんだよな。
「まぁ……シンがそうしたいならいいんじゃないかな。でも勇者様にはシンの事聞くよ?」
「あ? 何でだよ?」
「え、シンを人間にするためじゃんか!」
おさらいをするが、シンを人間にするにはシンそっくりの人形を作らなければならない。
だからシンをよく知る勇者様から情報を得る必要がある……まぁ勇者様に人形の作成を頼めたら、それが1番なんだけどね。
それで僕の答えにシンはハッとしたのか「あっ……そうか。悪い」と僕に謝った。
「ううん、別にいいよ。それに僕も憧れの人に会えるのが楽しみだから!」
「フッ……そうか」
「それじゃあ。シン、行こうか!」
僕は人形を肩に乗せて部屋を出たのだった。
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