美少女ドール爆誕?

「だから気に入った男の子の人形がなかったら、オーダーメイドしてもらう事になるんだけど……」

「おい待て。何で男の人形がねぇんだよ」

「だって売れないもん」

「はぁ……?」


 シンは「訳が分からない」とでも言いたげな、困惑した声を上げる。


 でも……僕にはよく分かるよ。男の人形が少ない理由を……! 僕はちょいちょいっとシンに問いかける。


「シン、少しクイズをしよう。一般的に戦闘を職にする魔獣使いやテイマーは男と女、どっちが多いと思う?」

「はぁ? そんなの男に決まってるだろ」

「だよね。それで、その男が自分の使い魔を人形化する時……男の子人形か女の子人形。どっちを選ぶと思う?」

「……」


 しばらく黙った後にシンは答えた。


「……いやいやいや。それでも男選ぶヤツもいるだろ」

「まぁいるかもね……でもそれは少数!」

「はぁ?」

「人形化している時は、基本戦いとは無縁の場所にいるんだよ? そんな時は可愛い女の子と一緒に居たいじゃんか!」

「……」


 そしてまた長い沈黙が訪れる……


「俺が魔剣になっている間……冒険者はこんなキモイ奴ばかりになっていたのか?」


 まぁ。シンが言いたい事も少しだけ分かるけど……


「シン、君の時代から変わったんだよ」

「……」


 好きな物を好きと言える……そんな良い時代になったんだよ。


「いや、まだ……まだだ! 少なくても男用があんだろ!?」

「あ、はい。あるにはあるけど……見ます?」


 そう言ってドールさんが男の子の人形を見せてくれたけれど……


「ひでえなコレ……」

「……」


 そのクオリティは、女の子のとは比べ物にならないほど低かったのだ。


 慰めるように僕はポンポンとシンを叩いた。


「……シン」

「んだよ……」

「大丈夫だよ。君の事何か誰も知らないんだから」

「いや結構知られてるけどな」

「まあまあ……」


 そう言って僕は目立つ位置に置いてある、白髪の似合う赤目の女の子人形を手に取った。


「さぁ……」

「さぁ。じゃねぇよナメてんのか」


 するとそれを見たドールさんが食い付いてきて。


「おっ、それ私の自信作だよ。それにするの?」

「あーそうなんですか! これ可愛いですよ!」

「わー嬉しいなー!」


 何となく手に取った物だけど……確かに可愛いなこの子。


 やっぱり目立つのはこの長い白髪……ツインテールと言うやつかな。これはツンツンしてるシンっぽさがあっていいな。


 うん。これにしよう。


「この人形はシンに似合うかもしれない……ドールさん、僕これにします!」

「うんうん。ありがとう! じゃあ銀貨10枚ねー」

「は……はい!」


 少ない手持ちから、僕はお金を払う。


「はい、確かにー。それじゃ魂を入れるわけだけど……」


 ドールさんは魔剣を見る。


「入る気は?」

「こっ、これに俺が入るのか……?」

「まぁ1回だけでも試してみたら? 1度入ったら自分の意思で出たり入ったり出来るし……それにせっかくアルさんが買ってくれたんだから、試さないのは勿体ないよ」

「……」


 ドールさんが僕の言いたい事全部言ってくれた。そしてすっかりと言いくるめられたシンは。


「……1回だけな」


 やっとデレた。


「ほいほい、じゃあ剣を前に出してね」

「あ、はい」


 そしてドールさんは人形と剣を並べて、何やら魔法を唱え出した。そして……


「ほっ!」


 人形に魂を入れるような動きをした。


 すると…………人形はゆっくりと動き出し、首を振って自分の手をまじまじと見た。


「わっ! 動いてる!」

「お、成功したねー」


 そして人形は立ち上がったと思ったら……


「……ははっ! すげぇ……すげぇや! 俺、自由に動けるぜ!」


 そう言って台から飛び降りて、店の中を走り回るのだった。


「あっ、シンちょっと待て……えっ!?」


 そして変化は僕にも訪れた。さっきまで全く離れなかった魔剣が、いとも簡単に僕の手から落ちてったのだ。


「おっ……おい! シン! 魔剣が魔剣じゃなくなったぞ! やっと僕は自由になったんだ!」

「ふへへっ! 俺だってこうやって寝転がれるぜ! こんなに自由に動けるの、すげぇ久しぶりだ!」


 そして僕らは顔を見合わせて、笑い合う。


「はははっ!」

「へへへっ!」



「「これは最高だなっ!」」

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