人形の可能性
で、やって来ました人形屋。調べたら結構近くにあったから助かったよ。
早速僕はその木製で作られた扉を開いて、店の中に入った……
「…………あ、いらっしゃーい」
最初に目に飛び込んできたのは、正面の受付の机にダラーんとうつ伏せになっていたメガネ姿の女の子店員だった。
そして視線を横に移してみると、50センチ程の高さの人形がズラーッと立って並んでおり、謎の威圧感を放っていた。
とりあえず僕はその店員に声を掛けた。
「あの、すみません」
「あー。それって魔剣? 」
「えっ!?」
早っ。正体バレるの早っ! と驚いていると。
「あー。この店まあまあ長くやってるからさ、だいたい分かんのよ」
と、眠そうな目を擦りながら店員はそう言った。
「そ、そうなんですね」
「うんー。魔剣持った人結構来るんだよー?」
するとシンはバレてるのを確認したのか、普通に喋り出した。
「……つーか今更だけどよ。俺を人形に移したからって、魔剣は魔剣のままなんじゃねぇの?」
「おっ、こんなにハッキリ喋る魔剣は初めて見たよ」
店員は少し魔剣に興味を持ったのか、ここまで来てまじまじと魔剣を見つめてくる。
「……近けぇ」
「あ、ごめん……それで何だっけ。魔剣のまま? ならないよ、この剣が魔剣なのは君の魂が入っているからなんだよ」
「……そうか」
そうだったの!? じゃあこの世にある魔道具は全て、何かの魂が入っているって事……?
「しかし……ここまで意思疎通出来るなんて。本当に君は何者なんだい?」
「……俺は。シン・クレイトンだ」
あっ、言うんだ。そしてそれを聞いた店員は「ふんふん」と頷いて。
「なるほどなるほど。あの伝説の……それなら人間になるのも難しくないかもねー」
そう言ったんだ。
「えっ!?」
「なっ……!?」
当然僕らは言葉を失う。
「正確には人間じゃなくて『人間サイズの人形』に魂を入れられるかもって事なんだけどね。でもその人形だったら五感だって感じるし、表情も出るし……本当に人間と何も変わらないんだよ?」
「……」
「あ、もちろん人間のように戦ったり、人と性交だって出来るよ。まぁ流石に子供は作れないけどね」
「……フッ」
それを聞いたシンは魔剣をギラギラ光らせて……
「アル。俺は絶対に人間になるぞ」
「……」
そう宣言した。いや、まぁ……別に動機はどうであれ、魔剣じゃなくなるなら、僕は何だっていいんだけどさ……
「でもねー。人間サイズの人形に魂を入れるのは、その小さいのに魂を入れるのとはわけが違って、相当難しいんだよね」
「どう難しいの?」
「魂と人形がピッタリ一致しないと、動かないんだよ。つまり……」
「つまり?」
店員は一呼吸置いてこう言った。
「つまり君が人間になりたいのなら『シン・クレイトン』そっくりの人形を作らなくちゃいけないんだ」
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