表彰式じゃ

 それで次の日。結局僕は『表彰』と言うやつを受ける事に決めたんだ。


 そんな訳で……ここ、ギルドの中央。最も人が集まる場所に、冒険者らと並んで立っているんだけど……何だろう。何かがおかしいような……?


「えー、今回の騒動はとても大変なものじゃったが……それでも皆勇敢に戦ってくれた! そのお陰で多少被害は受けたが、街を守り抜く事ができた! 本当に感謝しておるぞ……って国王がそんな事言っておった気がする」


 辺りは「どっ」と笑い声が上がるが、ミミルさんは全く気にせずに続けて言う。


「それで……その中でも特に活躍してくれた者……Sランクの2名、AAランクの1名、Fランク1名……合計4人の冒険者達……いや、4人の英雄を表彰したいと思う!皆の者、盛大な拍手を送るのじゃ!」


 辺りは拍手喝采に包まれる……うん。いや。いやいや。ちょっと待って下さい。やっぱりおかしいわ。


 だって僕っ……僕だけ! 場違い感が!!凄すぎないか!!!?


 ──


 10分前。


「アル、遅いぞ」

「いや、何時にやるか聞いてなかったから、早めに来たつもりだったんですけど」


 僕がギルドに行くと、そこには不服そうな顔をしたミミルさんが、腰に手を当て立っていた。


 このポーズにこのちんちくりんな身長……何だかお菓子屋さんの前に置いてある人形さんみたいだ。


 ……まぁ口にしたら絶対にボコボコにされるだろうから、絶対言わないけどね。


 それでミミルさんは僕の顔を見たと思ったら、すぐ反対の方向を向いて言う。


「まぁ良い。今からもう少しで始まるから、とっととそこに立つのじゃ」


 僕もそっちの方を見てみると、冒険者らしき人が3人、各々自由な格好で立っていた。


 左から、2本の剣を背中に差した黒髪の男、鎧を身にまとった高身長の女騎士、多くのアクセサリーをジャラジャラ付けた金髪の男……。


 綺麗な程に見た目がバラバラだ。個性的と言うべきだろうか。


 でもまぁ強い人ほど変な格好するって言うし……この人らが表彰されるってこともそんなに驚きはしないけどね。


 そんな事を思いつつも僕は言われた通り、金髪の男の隣に立った……それから数秒もしない内に隣から声が。


「おっ、全然見ない顔じゃん! お前、名前なんて言うの?」

「えっ?」


 その言葉が自分に向けられたものと気付くのに、少しの時間がかかった。だって、初対面でこんな軽く話されるとは思わないじゃんか。


 それで僕はアワアワしつつも、何とか答えた。


「ぼっ、僕はアル……です」

「へぇ、アル! お前と似た名前の奴とオレ友達だぜ! そいつアルベールって言うんだけどな!」


 金髪は笑ってそう言った……いやそれ似てるって言うのか?


 そんな僕など気にせずに、金髪は話を続ける。


「そんで俺はレウスってんだ!史上最強のアーチャーと言えばオレのことよ!」

「あ、あーちゃー?」

「知らねーの? アーチャーってのは弓使いのコトだ。でもアーチャーの方が呼び方かっけぇから、俺はそう呼んでんだ!」

「そうなん……だね」


 敬語を使おうかどうか一瞬迷ったけど、何か癪だしやめた。


「で、アルは? 何の武器使ってんの?」

「えっと、剣だけど」

「へぇ、どんなのよ? ダガーとか?」

「いや……普通のやつだよ」


 まぁ……当然だけど、魔剣を使ってますなんて馬鹿げた事、とても言えるわけが無い。


「……」


 ……ん? 今どこかから視線を感じたような……? 気のせいか? でもこういう時って大体気のせいじゃないんだよな……


「よし、じゃあもう始めるかの」

「そーいや、何でミミちゃんここにいるのよ? もしかしてミミちゃんも表彰されんの?」

阿呆あほう。ウチは司会を任されているんじゃ。それに今更ウチが受ける意味などない。それぐらい考えたらすぐに分かるじゃろ……なぁアル?」

「……」

「アル?」

「えっ、はい、そうですね」


 完全に話を聞いていなかった。だからとりあえず同意する……けれどそんなのミミルさんにはお見通しのようで。


「全く、アル。ボケっとするでないぞ。お前が最後でメインなのだからな」

「そーだそーだ!」

「やかましいぞ、レウス」


 ……というかレウスはミミルさんと知り合いだったんだな。まぁミミルさんはギルドで1番偉いらしいし、それも普通なのかな。


「んーそれでは本当に始めようと思うが……他2人も大丈夫じゃろうか?」


 ミミルさんは向こうにいる、二刀流と女騎士にも問いかけた。


「……ああ」

「ああ!」


 ……同じ言葉なのに、何とも差が出るものだ。


「よし、それでは表彰式を開始するから……皆の者! こっちに集合じゃ!」


 そしてミミルさんの言葉を号令に、その場にいた冒険者達が続々と僕らを取り囲むように、集まってきたのだった。

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