買い物へ行こう

 ──それから2週間が経過した。


 相変わらず僕達は、モンスターの襲撃でめちゃくちゃになってしまった、グリフォンシティの復興を今日も手伝っていたのだが……


「なぁアルよ」

「何ですかミミルさん」

「お主、明日から来なくて良いぞ」


 ──突然。それは告げられた。


「えっ、嘘ッ!? 僕クビ!?」

「違う……復興作業があらかた終わったようじゃから、後はウチらが何とかすると言っておるのじゃ」

「な、何だ……てっきり戦力外通告でもされたのかと思ったよ」

「まぁお主がおらんでも、そこまで困らんのは事実じゃがな」

「……」


 それはせめて否定してくれよ。


「で、アル。明日からめでたく一部の店が再開するそうじゃよ。そして一般人も戻って来られるようになるらしい」

「本当! ならハンナさんも戻って来る……!」

「うむ、じゃから明日は買い物にも行ってきたらどうじゃ?」

「買い物かぁ……行きたいんだけど手持ちが少ないからなぁ」

「んーそうか」


 ミミルさんはそう言うと、腰に付けていた布の袋の口を開き……金貨を3枚取り出した。


「こんなもんかの、ほい」


 そして手のひらに載せ、僕に差し出してくる。


「えっ……えっ?」

「報酬じゃ。復興を手伝った者には国から金が出るんじゃよ」

「それは知ってるけど……何でミミルさんが?」

「ウチがその報酬を分配する係なんじゃよ」

「……何で?」

「だってウチ、この街の冒険者中で1番偉いんじゃもん」

「えぇ……?」


 全くもって訳が分からんぞ。1番偉いってどういう事なの……? そもそもどうやって決めるんだ?


「……で。要るのか? 要らんのか?」

「え、貰えるのなら有難くいただきますけど」

「そうか。ほい」


 若干戸惑いながらも、僕はミミルさんから金貨3枚を受け取った。


「あ、ありがとう」

「うむ……次はあそこにおる女子に報酬を渡しに行こうかの……うむ、可愛いから金貨30枚じゃな」

「ちょっとミミルさん!? ちゃんと配分を考えてから渡すんですよ!?」


 ──


 それで次の日。僕はグリフォンシティの中央にある市場までやって来ていた。


 いつも泣けるほどしかお金を持っていないため、普段は中々来ない場所なのだが……今の僕は違う。あるのだ。


 僕は大切に金貨を握りしめながら、歩いて色々な店を見ていく……すると脳内から興奮した様子の魔剣の声が聞こえてきた。


『おいアル! あの店にポーションが売ってんぞ!?』

「ポーション? あぁ、ミミルさんが何か言ってたような……」


 言われて立ち止まると、正面にある屋根だけ付いたような簡素な店に、瓶に詰められた薬のような物が置かれているのが見えた。


「あれがポーション?」

『ああ……あんな破格の値段で……しかもあんなに揃えているなんてな……すげぇ時代になったな』

「え、シンが現役の頃は?」

『ポーションなんてレア中のレアアイテムだった。本当に一部の人間しか手に入れらなくて……俺ら勇者パーティでも使うのをいつも渋っていたくらいだ』

「へぇー」


 何だか魔剣が勇者パーティの裏話みたいなのを話してくれるの嬉しいな。もっと聞きたいや。


 ……というか魔剣が僕にポーションの存在を教えなかったのは、今も高級なアイテムだと思っていたからなんだな。それなら納得……


 とりあえず僕は店の方へと近づいて、店番のおっちゃんに声をかけた。


「こんにちは」

「おお、いらっしゃい。色々揃ってるよ」


 見たところ他にも薬草や木の矢なども置かれていたが、やっぱり気になるのはコレよ。


 僕はポーションを取り上げた。


「これください」

「あいよ、銀貨2枚ね」


 言われて僕は金貨1枚を渡す……


「おいおいお客さん。そんなの出されちゃお釣りが払えないぜ」

「え?」


 お釣りが払えない? 一体どういうこと……と固まってしまった僕に魔剣が囁く。


『おいアル……金貨1枚は銀貨100枚の価値があんだよ』

「嘘ぉ!?」


 ……皆さんご存知、僕は金なし冒険者。基本は銅貨、銀貨しか使っていなかった。


 たまに遠目から金貨を見たことがあったが、銀貨よりちょっと高い位にしか思っていなかったのだ。それが……こんなに価値があったとは知らなかった。


 ……というかミミルさん、報酬の配分絶対間違えてるよな。貰えない冒険者出てきたらどうするんだろう……


「で、お客さん。どうすんだい?」

「え、えっと……」


 今の僕は、この金貨3枚以外に持ち合わせはない。なら……かくなる上は……








 


「じゃあお釣り要らないんで、この店の物全部下さい」

「はい、まいどぉ!!」

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