情報整理
それからなんやかんや色々あって……僕はようやく宿屋に帰ることが出来た。
途中、あの男は「アイツが俺を斬った」と僕に向かって喚いていたが、あの沢山の客が僕らを見ていたためその発言は嘘だと見なされていた。
まぁ……僕は本当に何もしてないからね。何ならこっちは胸ぐら掴まれてたぐらいだし。何かをしたのは……
『ふぅ、血を吸収したから知らねぇけど何だか調子が良い……今なら山とか斬れそうだぜぇ……』
コイツだ、魔剣。僕は部屋の端に立てかけている、独り言のうるさい魔剣に話しかけた。
「あの、ちょっといいかな……魔剣」
「あ? 俺の名前は『ダーヴィンスレイヴ』だ。魔剣じゃない」
「何なら僕だってひょろひょろじゃないし……まぁいいや。それでダーヴィンスレイヴ……さっきのは一体どういうこと?」
「さっきのって?」
「男を怪我させたやつだよ。何をやったんだ?」
するとあの光景を思い出したのか、魔剣はまた「きへへへっ!」と狂った笑い声を上げて言う。
「ああ、アレのことか! ……聞きてぇか?」
「うん聞きたーい」
「んだよ棒読みくせぇな……まぁいいや。特別に教えてやるよ」
特別と言う割には、魔剣はイキイキハキハキ話すのだった。
「アレは俺の持っているスキルの1つ、
「……」
……全く聞いたことのないスキルだ。いや、そんなことより……
「お前……それずっと僕に隠してたのか」
「あ? そんなの【鑑定】すればすぐに分かるだろ……ってお前持ってないんだ。へへっ……それは悪かったな!」
いちいち腹立つなコイツ。というかそのスキルって……
「もしかして、僕が魔剣を握っていた時でもそれ発動出来たの?」
「ん? ああ。当然やろうと思えば出来たぞ」
それってあの時の僕も殺せたってこと……というか僕なんかコイツの気まぐれで死ぬかもしれないんだよな……ホント恐ろしい。
「ちょ……ちょっと一旦整理しないか。今更だけど、僕は魔剣について知らないことが多すぎるからさ……」
「でもお前、俺を引き抜く気は無いんだろ? なら聞く意味ないんじゃねぇのか?」
「それは念の為だよ」
もちろん言う通り引き抜く気はさらさら無いのだが、万が一間違えて握った時の為の対処の仕方を知っておく必要があるからな……
それにまた僕の知らない技を使って問題を起こすかもしれないから……魔剣の情報は知っておくだけ損はないだろう。
それじゃあ最初から整理していこうかな。
「まず……ダーヴィンスレイヴは魔王軍の武器であると。それは間違いないよな?」
「ああ。間違いない」
「じゃあ何であのゴミ捨て場にいたの?」
「……」
「おーい。もしもーし?」
「……」
だがいくら待っても、魔剣は話すことはなかった。初っ端お黙りかよ……まぁいいや。ここで時間掛けてもしょうがないからね。
「じゃあそれはいいから。次は魔剣の基本性能についてだけど……魔剣は握られると、その人の魔力を吸収するんだよね」
するとさっきまで黙っていたのが嘘かのように、ペラペラと喋るのだった。
「ああ。所有者にだけだけどな。所有者が握ったら一定のペースに合わせて魔力を吸収していく。でも意外と吸収スピードは遅いから、魔力がもりもりある奴は長い時間……2、3時間は握り続けられるぞ」
「へぇ、それは知らなかった」
それじゃあ魔力の沢山ある人が手にしたら、普通の武器として使える……と。なら数分で気分が悪くなった僕は相当魔力少ないんだ。……悲しい。
「そして鞘に戻すには生き血を吸わなきゃいけないと……これって絶対?」
「ああ、絶対だ。他の方法じゃ離せない」
「絶対?」
「絶対だ。しつけぇぞ」
「はぁ……なるほど。それじゃあ量は?」
「血の量ってことか? 詳しくはよく分かんねぇんだけど……人間1人分くらいじゃねぇの?」
……多分それは違うだろ。僕が魔剣を刺した時、結構早めに手放せたし……人間0.5人分くらいが正しいんじゃないか? いやでも人って半分血を失ったら死ぬんだっけ……ならもっと少ない?
まぁ何にせよ、反論したら面倒くさそうだし黙っておこう……
「それで魔剣の魔法とスキルについてだけど……何が使えるの?」
「クク、聞いて驚け。基本全て使えるんだよ俺は」
「え……本当に?」
「本当だ。回復系や転移系、鑑定系は当然使えるし……基本的な攻撃の火や水、光や闇はもちろん……即死魔法だって使える」
「えっ、最強じゃんか!」
「でもそれらを使うには……魔力が必要ってわけ。さっきの
「ああ。なるほど」
便利な能力にも欠点は付き物ってか……いやもう既に欠点だらけだったけども。
それじゃあ魔剣で魔法やスキルを使いまくるには、魔力を貯めておくのが大切なんだな……まぁ使うつもりは一切ないけど。
「おい、ひょろひょろ。こんなもんでいいのか?」
「あっ、うん。とりあえずはこのくらいでいいよ」
結構情報は集まったしこんなものでいいかな……魔剣を手放す方法という1番欲しい情報は手に入らなかったけども……
「でもダースレって人間みたいだね。魔法もスキルも使えるし」
「……何だその呼び方」
「だってダーヴィンスレイヴっていちいち呼ぶの面倒だし。いいよね」
「……好きにしろ」
何だ、急にクールキャラみたいな反応して……もしかして照れてんのかな……ちょっとからかってやろ。
「ねぇ、ダースレ? もしかして照れてるの?」
「……あ。そうか、お前今すぐ死にてぇんだな」
「それは冗談になってないから!!」
──
「あとさ、寝る前に聞いておきたいんだけど……どうしてあの男を痛めつけたの?」
「……そんなの俺の勝手だろ」
「いやそんな勝手に行動されると僕も困るし……それに今回は良かったけど、またあんなことしたら僕だって酒場を辞めさせられるかもしれないし……」
と、そこまで言った所で、ダースレが割り込んできた。
「……ペラペラうるせぇなぁ。俺がムカついたからやっただけだっつーの。今度からは気をつけてやるから、もう黙れ」
「あ、うん……でも……ダースレのおかげでちょっとスッキリしたよ。こんなこと言っちゃ店員失格だけど……本当にありがとね」
「……フン」
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