第2話ゲームの太鼓
バス停の側のスーパーに入り、おにぎりにしようかそれともサンドイッチにしようかと迷いながら、去年の丁度この日、祭りの太鼓の練習の始まる日の事を思い出していた。
「そうだ、あの日が、あのゲームが俺の運命を変えたのか」
「太鼓の達人」
あの息の長いゲームがきっかけだったのかもしれない。
「太鼓得意なんだろ?、行こうよ、見せて」
「太鼓の達人? 嫌だよ、あれ本物と全く違うんだから」
遠方の会社に勤めて、同僚たちとも仲良くやっていた。結局断りながらもショッピングモールのゲームコーナーに行き、俺は先陣を切った。
「全然だめじゃないか! 」
「難しい!! 普通の方が絶対いい! 」
「ハハハ、達人返上」
「俺は達人まで元々達してない」
仲間内でそんな会話をしていると、明らかにこちらを睨むように待っている若い男の子がいる。高校生くらいだろうか、俺は「どうぞ」と譲り、彼は声はなかったが、礼儀正しく頭を下げて、バチを持ちゲームを始めた。
「凄い! 」
「全部完璧じゃないか」
「凄い速さ!! 」
赤の他人の賞賛が巻き起こる中、彼は全くペースを乱すことなく、とてつもなく早いフレーズを見事に叩いた。まるでドラムのように。
唯一違うところは縁を叩くところだけだった。
「上手いなあ!!! 」
「高校生? ジュース奢ってやるよ、何がいい? 」社会人からの言葉にやっぱり嬉しそうにした細身の男の子を見ながら、俺はもちろん悔しいとはこれっぽっちも思っていなかった。
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