俺は爆弾。

まだ未定

第1話俺は爆弾

 一限の鐘がなる。トイレに行っていた俺はそそくさと自分の席に着く。筆箱を開けると、どうやらまた忘れ物をした事に気が付いた。元から俺は物忘れをするたちであったが高校に入学してから症状が悪化したように思う。だがそんな時にいつも助けてくれる唯一の友人がいる。

「レンヤ、悪いけどシャーペン貸してくんない。」

「おいおい、潤またかよ、しゃーないやつやな。」

 いつもは俺のことを気にしない連中がクスクス笑っていたが、いつものようにレンヤだけはいつも笑う事なく俺を助けてくれる。


 そして、学生生活唯一の楽しみであった昼食の時間である。しかし、あるはずのものがない。

「俺の弁当どこ。」

「あれ、潤今日は弁当忘れたのかよ。」

「いや、そんなことはないはずなんだ。」

「でもないものはないんだろ。いつもの忘れ物じゃないか。」

「そんなことはない。証拠にカバンの中に弁当の匂いが残ってる。」

レイヤは顎に手を添えて遠くを見る。俺はそれを注意深く見ていた。

「なあ、それってホントに潤の弁当の匂いか。」

「なに言ってるんだよ。」

「冷静に考えてみろ。この時間って教室中弁当臭くなるだろ。だから、潤が嗅いだ匂いって教室の弁当の匂いが入ったのかなって思うんだよ。」

「まあ、言われてみればそうなのかな。でもなあ……」

「まあ気にすんなって、俺のクリームパンやるからさ。」

空腹だったこともあり、素直に受け取ったパンを食べた。しかし、嚥下えんかしていくうちに思考が安定したところで、なくなったはずの弁当についてふと思い出した。今日の弁当の中身にパクチーが入っていたのだ。そこで再びカバンの中を嗅いでみた。


 放課後のことである。あろうことか俺は唯一の友人を疑っている。

「レイヤ、俺予定あるから先帰るわ。」そういって俺はトイレに篭った。レイヤの行動パターンとして放課後は小便をしてから下駄箱に向かうのだ。しばらくすると複数人の話し声が聞こえてきた。もちろんそこには例の声もある。

「あの時は焦ったわー。あいつさ物忘れ酷くて馬鹿なくせになんであの時は妙に鋭かったんだよ。」

「そりゃあ、デブだし、弁当の話になれば鼻が効くんだろう。」

「それな。俺もマジでうざかったし、今度はどうしてやろうかな。もうあいつの物隠したり盗んだりするの飽きたし、今度は逆に盗むんじゃなくて、あいつに盗んだことにさせてやるか。」

「いいね、天才的。」

「まあ、あいつにも飽きてきた事だしやばいやつでも仕込んでみるか。それに意気地なしのあいつのことだし何されても文句言われねえからな。」

話し声が遠ざかっていくのに比例して停止していた思考が動き始めた。俺は明日起こり得ることを何パターンも想像した。今度は助け舟もなく、盗みを働いている。その一貫した結末に逃げ場はないと思えた時、心臓の鼓動が聞こえてきた。手足の先が冷えるのに汗をかいた。再び思考が停止した。視界が歪みを紛らわすように目をつむった。


 その日の夜、レイヤを自然な口実で呼び出しファミレスに行った。たわいの無い話をして店を出た。そして、いつものように近道に裏路地を通る。カバンのチャックを気付かれずに開けた。

「俺知ってるよ。」

「なに。」

あいつがこっちに向いた瞬間包丁で首を掻っ切った。声は出せないでいたがなんとか意識を保っていた。

「レイヤが俺の物を盗んだりしてからかってたんだろ。いくら俺が隠キャだからってなめんなよ。クラスの奴らも同罪だからな。わかってたんだからな。」

そして俺は奴の首を切り離し、それをカバンに入れた。


 翌朝早朝である。教卓の上にはレイヤの首があった。黒板にはお前ら全員殺すと書いてある。そして学校に忍び込んだ潤が教室のどこかに隠れてる。


 




 

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