君の姿は花火の中
飽き性な暇人
第1話
俺は、二年A組、藤江京。
突然だが、俺には好きな人がいる。
その人と最初にあったのは文化祭の一ヶ月ほど前の昼休みの屋上だった。その日、俺はいつも通り一人で屋上に行っていた。
俺は前にふらっと来てみた時からこの場所が気に入って、通っていた。
一人なのは、決して友達がいないわけではなく海風が吹く屋上はのどかで静かな落ち着きのある場所だった。
......ホントだよ?
ふらっと来てみたのも友達が(以下略)。
とにかく、その日、いつものように校舎二階の購買で買ったパンを片手に屋上のドアを開けた。
いつも通りなら、ドアを開けた先には落下防止用のフェンスの向こうに海という絶景が見える。
しかし、その日は絶景の中に少女がいた。
その少女は耳にイヤホンをを付け、右手に小説、左手に俺と同じパンを持っていた。膝を立てていたせいで、太ももの白い肌が太陽の光に反射する太陽の光に反射している。
俺は思わずじっと見てしまった。(決して太ももではない)
その視線に気づいたのか、その少女はこちらに顔を向けた。
俺と一瞬、目があったが少し視線をそらされる。
屋上に入るかどうか迷ったが、ここで遠慮すると少女が変な罪悪感を感じそうなのでその少女と距離をとって座り、昼食をとった。
しばらく次の日も俺が屋上に行った時にはすでに少女はいた。そして、特に話さず数日が過ぎた。
少し気まずかったし、話してみたい気もしたが、本を読んでいたので話すにも話しかけにくかった。決してチキったわけでも、どう話して良いかわからなかったわけでも、ましてや(以下略)。
だが、その時はおもむろに訪れた。この日は事前にパンを買っていたため購買には寄らず、授業が終わってすぐに屋上に向かった。
校舎三階、スマホを見ながら歩いていた。
「今日は違うパンなんだね」
「うあっ!」
誰にも普段誰にも話しかけられることもない(本当はすげー話しかけられる)ため、情けない声とともに肩を軽く震わせてしまった。
パン? なんのことだ?
心当たりのないことに少し戸惑いながら、話しかけられた方を見た。そこにはあの少女の顔があった。
彼女と話した第一声がこれだと思うと少し情けないが、これがきっかけで彼女と話すようになった。
この少女の名前は秋野優花というらしい。俺と同じ二年生でE組らしい。
E組は教室が購買の前なのでパンをすぐ買うことができる。だから、いつも俺より前に屋上にいたということだ。
聞くと、秋野はこの前編入してきたばっかりであまりクラスに馴染めていないらしい。なので、教室に一人で食事するのも寂しいので場所を探していたところこの場所を見つけたらしい。俺もこの理由と同じ......ことはないが共感はできる。
他にも、いつもイヤホンで聴いている曲の話や読んでいる本の話などいろいろな話をした。そして、俺はそんな彼女と一緒にいることで彼女に恋をしてしまった。
しかし、文化祭の準備期間に入った時、秋野は昼休みに屋上に来れなくなった。
原因はいうまでもなく文化祭だ。正しくは文化祭の準備のせいだ。
文化祭の準備をするために色々な人と話す機会が増える。そのため、話せる友達が増えて、昼休みも一緒に食べているのだ。(ん? なんで俺は友達が(悲しいので以下略))。
そのために、会う機会が減ってしまった。別に約束をしているわけでもないので良いのだが、何か寂しい。
そして、そのまま文化祭の準備期間は過ぎていってしまった。
そして、文化祭当日。
俺はこの日彼女に告白しようと思っていた。少しベタかもしれないが、何もしないでこのまま終わるのは何か違う気がした。そのために、そこし計画を練った。
1. 彼女に「一緒に回らない?」とさそう
2. 告白する
あれ、1と2の間、難易度離れ過ぎてね?
とにかく秋野と合わなければ始まらない。
なので秋野と会うためにE組に向かった。
しかし、教室を覗くと秋野の姿は見当たらなかった。
シフト入ってるのか?
そんなことを思いつつ、受付の人に尋ねてみた。
「秋野さん、いる?」
「あー、さっき誘われて回ってましたよ」
え、まじ?
誰に? 友達に? 男なのか?
そんな思考が脳をよぎり、硬直してしまった。
「よかったら、伝えときましょうか?」
「い、いや、大丈夫」
俺は無理やり笑顔を作り、そのありがたい申し出を断る。多分、その時の笑顔は引きつっていただろう。
この会えなかった期間に彼女を狙っている男が現れてもおかしくはない。普通に可愛いし。そうだよなぁ。はぁ、
まじかぁー
彼女に告白する気を失った俺は肩を落としながら自分のクラスに戻った。
結局、煮え切らないまま最後まで残ってしまった。
去年の文化祭は自分のシフトが終わったら即帰宅していたが、今回は残っていたので後夜祭というものに参加できる。だが、聴いた話によると、これは後夜祭というなの公開告白イベントらしい。(盗み聞き)
そんなところに今行ったら、多分そいつらの告白が失敗することを切に願ってしまう。なので、この心の傷を癒すために塩の乗った海風の吹く屋上に向かった。
塩は傷に効くっていうし、俺の心も癒してくれるだろう。
そんな慰めを自分に送り、ドアを開けた。
そこには秋野が立ってグラウンドの方を見ていた。そして、ドアの開く音に気づいたのか、こちらを振り向き、
俺と目があう。
思いもよらないことで、再び体を硬直させてしまう。
すると、彼女は笑顔で俺に話しかけてきた。
「久しぶり、って行っても数日目あってるけど」
「よ、よお」
隠しきれないほどの動揺を隠そうと頑張りながら、俺も彼女に話しかける。歩きながら彼女の横に並ぶ。
目の前にはグラウンドとそこに群がる本校の生徒。きっとあそこで公開告白が起こるのだろう。
少し沈黙が起こる。
その時俺は考えていた。
なんでここにいるんだ? 友達はどうしたのだろうか?
「どうしてここに?」
俺は考えていたことを聞いた。
「だって、藤江くんが私のこと誘いに来たって聞いたから」
「い、いやっ、あれは誘いに来たというかなんというか......」
俺は笑ってごまかす。
「それより、友達と回ってたみたいだけど後夜祭の方に行かなくて良いの?」
「うん」
彼女は短く答える。
再び俺と秋野の間に沈黙ができる。だが、度々グラウンドから歓声のようなものが聞こえてきて、気まずい雰囲気を緩和してくれる。
ちらっと秋野の方を見てもずっとグラウンドの方を見ていて、横顔しか見えないが、暗い中でその様子も伺えない。
俺の中で消えたしまった告白への熱が再び再燃してきた。
すごく、すごく迷ったが、ここで諦めるのはまだ早いと思った。彼女に何の気持ちも伝えないで終わるのは何もしていたいのと同じだ。
そして、俺の口が開く。
「秋野、俺とつき」
あってくれないか。
その声が後ろからの凄まじい音にかき消される。俺は驚いて後ろを振り返る。最初に目に飛び込んできたのは眩しいほどの光。だが、すぐに目が慣れて目視できた。
花火。
去年、帰宅して何も知らなかったけどグラウンドと反対側の海から花火が毎年打ち上がる。だから公開告白イベントができたらしい。
少し眺めたが、告白の返事は? そもそも聞こえたのか? と思って秋野の方を振り返る。
すると、花火で照らされた彼女がこっちをまっすぐ見ていた。
そして、彼女の口が動く。
君の姿は花火の中 飽き性な暇人 @himajin-akishou
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