第12尾。セラミック>オリハルコン

「なぁ爺さん。あれってもしかして……」


見覚えのある武器?を指差す海老。


「兄ちゃん中々通なモンしってるじゃねぇか。あれはな、伝説の神器フライパンだ」


「は? それただのフライパンだろ?」


「神器になんてこと言うんだ!」


バコンッ――

鈍い音が鳴り響く。


「痛えッ! 何すんだジジイ!」


「何するって神聖な神器に何てこと言うんだ!

これはな。太古の大昔、伝説の勇者フライッパ様がこれ一つで争いを沈めた神聖なる武具なんだ」


(フライッパて誰だ……歴史改ざんされてんぞ)


ジジイ、フライパンを語る――


「オリハルコンの100倍硬い伝説の金属、セラミックを固めて作った代物だぃ。これで殴ればどんな生物もイチコロ。弓矢なんて弾く弾く。そして卵を焼くこともハエたたきにもなるんだぜ? どうだ兄ちゃん凄いだろ!」


何故かドヤ顔になるジジイ。


「全然凄くねぇよ! 最後ロクなもんに使ってねぇじゃねぇか! つか通販で買える伝説の金属ってなんなんだよ! オリハルコンの方が欲しいわ!」


「あぁオリハルコンならそこにある。好きなだけもってけ」


振り返ると――


ガラクタのように積み上げられていた。


「俺のオリハルコンのイメージ返せやぁ!!

茶色でめっちゃ錆びてんじゃねぇか! こんなんオリハルコンじゃなくてサビハルコンだわ!」


「……ったく。ロクなもんがねぇな。別んとこ行くぞコットン」


「待って、あれ欲しい」


「え?」


「おい待てあれって」


コットンが指を指す先には――


フライパンだった。


「駄目だコットン。あんなもん武器に使えるかよ。馬鹿言うんじゃねぇ」


「レッチリさん。アレが私を読んでる気がするの。なんかこう……アレをこうしてああしたら、そうなる気がする」


「いやさっぱりわからん。何をどうしたらそうなるんだよ?」


「だからぁー! アレをこうしてそうしてああしたら、こうなるの!」


さっぱり代名詞ばかりで分からないレッチリ。

すると突然ジジイの顔つきが――



険しくなった。


「嬢ちゃん分かるのか? これが……この武具の凄さが……」


「えぇ。分かるって言うか……教えてくれてるの。この世界のフライパンが」


シリアスな空気が流れる中――


(え? 分からねぇの俺だけ? ………えっ? ただの1万ちょっと高いフライパンだよな? ちょっとどういうことなんだよおお!)


ただ1尾だけ取り残される海老であった。


「そうかい――。ついに現れるとはなぁ……。だがな、いくら金を積まれたってこれを売るわけにゃ行かねえな。」


「じゃあ……どうすればいいの?」


「そこでだ。アンタらに試練を科す。フライパンを持つ者に相応しいか、見極めさせて貰う」


「試練って言ったってどうするんだ?」


「近頃毎日の様にスライムが降ってくる。街にちょっかい出してくるんだ。奴らは強い――その中でも大玉がいるんだ。とんでもない魔王の幹部が、それをたおして来い」


「おいおい……いきなりハードル上がってんじゃねぇか。しかもスライムて……かなり弱いんじゃ」


「おいバカ言ってんじゃねぇぞ兄ちゃん。スライムはこの世で最も環境能力が優れた魔物なんだ。打撃は効きやしねえ。魔法を撃とうもんなら吸収して逆に進化しやがる」


「おいそれ勝ち目無いだろ……」


「だから試練なんだ。分かるかい?」


「えぇ……分かったわ。倒してくればいいんだね?」


「そうとなれば準備しに行くよ! レッチリさん!」


「しゃあねぇ……いっちょやってやりますか!」


――1時間後。


「にしてもどうすりゃいいんだ………あんなのに勝ち目ねぇじゃん」


勢いでコットンの大船に乗っては見たが、どうしたらいいか検討もつかない。


乗った大船がタイタニック号でない事を願うばかりだ。


それもそのはず。この世界のスライムはかなり強い。駆け出しの冒険者はスライムを舐めて大体死ぬ。


火属性魔法を撃とうもんならヒートスライムになり、水属性魔法を撃とうもんならアクアスライムになり……という風にすぐ進化するのだ。


オマケに斬ろうもんなら分裂し、打撃は吹っ飛びはするものの、ダメージは全くない鬼畜仕様。


だが、必ず倒す方法はあるはずだ。

探せ。手段を弱点を――。


「とりあえず宿屋と食材と魔道具辺りか。」


「なんで魔道具なの?」


「ポーションが減ってきてるからな……。ここらで補填しときたいんだよ」


「あとなコットン。卵はとにかく沢山買うぞ」


「なんでそんなに沢山買うの?」


「温泉卵用とにちょっとな」


「食べ物粗末にしちゃいけないよ!」


「だからだ、武器用は腐った卵にする。それでいいだろ?」


「う、うん……」


「なぁコットン。お前魔法とかは扱えたんだっけか?」


「いいえ……使った事がないの」


(あぁ……やっぱりな。そういや魔法は魔道具屋に行けば、ちょっとは教えて貰ったりできる物なのか? まぁわからんが行ってみるか)


「よし、とりあえずだ。お前の身の回りの装備と魔法辺りを揃えるか! ……そうとなれば行くぞコットン!」


急いで魔道具屋に走るレッチリ。まるで蒸気機関車のよう。彼が通った後には砂ぼこりが舞う。


「げっ……ゲボッ! ちょっ、ちょっと速すぎるよー! レッチリさーーん!」


さて彼らはどんな装備を整えるのか?



……to be a continued

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伊勢海老転生~自分で自分を調理して戦え!!~ ザガリオ二オン。 @Zanigarion

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