第11尾。スマホはぶん投げるな

「ふぃー。やぁっと着いたぜ……。ここが最初の街アクウィールねぇ……それにしても何目回してんだコットン。おい起きろ。着いたぞ」


水都「アクウィール」


至る所に水車が回っており、別名「水車の街」

ちなみに江戸も、用水路を生かした町である――。



人口は約1万といった所で、まぁまぁな都会である。この街を流れる水はとても上質だ。彼が飲んでいた川の水はこの川の上流である。


街並みは西洋風の建物がかなり目立ち、石レンガ造りの所が多い。


また近くには温泉街もチラホラあり、ここでの半熟温泉卵はこの街では名産品である。


街の紹介の蛇口は一旦ここらで締めておこう。


レッドは丸太のように彼女を抱え、爆速で走ってきた訳だが――



どうやらコットンの家と街の距離が近かったようで、街に到着するもまだ体から煙が立っている。脇に抱えた彼女を揺らして起こすも――


「ふへぇ……」


全く起きない。


どうやら彼が早く走りすぎて、気絶してしまった様だ。


「ダメだ起きねぇな……。ったくこんくらいでヘナってんじゃねぇよ。ただでさえ重いんだか――」


彼は言ってはいけない言葉を言ってしまった。





「だれが――重いって?」




彼女は突如大きく目をひん剥いた。

今さっきまで気絶していた彼女が嘘のように起きている――。


目は赤く光り、歯をむき出しに。

そして彼の腹を両手で囲い、地に足を付け――



大きく海老反りになり彼の頭を地面に打ち付けた。


「うがっ――」


その後彼を大きく投げ――


「いやああああああああああああああ!」


ドカッ――。

地を背にして倒れた瞬間、騎乗位で乗っかり―



顔を殴る。殴る。ぶん殴る。


「誰がっ、誰がっ、重いっ、って言うんじゃあ!」


「ぐふっ、ごはぁっ、わかっ、た。俺が悪かったから!」


「そう――。じゃあ死になさい」


彼女…殺エビマシーンは冷たく死刑宣告を呟くと、懐から暗黒物質を取り出し―


「ふぐっ――」


彼の口に無理矢理お届けデリバリーした。産地直送出来たてほやほやの廃棄物である。


「ぎぃいやあああぁあああ!」


アクウィールには鈍い断末魔が響き渡ったという。


――1時間後。


「たく……いきなりぶん殴るこたねぇだろ」


「本当に反省してるの?もう1回殺られたいならやるけど」


「……俺が悪かったよ」


「よろしい」


「と、り、あ、え、ず!まずは装備と食料だ。まずこれがないと冒険なんざ出来やしねぇからな」


「そうだね。まず武器屋だー!」


「お前武器いらねぇだろ」


「え? なんて?」


「な…なんでもないです」


彼はそんなじゃれ合いをしながら、スマホを取り出し地図アプリを開いた。


「えーと……武器屋武器屋ー。あったあった。

さすが街だな。カリバーにブキブキ堂ねぇ……おっ!ブキブキ堂は右にあるな」


「ねぇ。それなに?」


スマホに興味津々のコットン。


「あぁこれか? これはまぁアレだよ。地図見たりおしゃべり出来るやつだ。まぁ神の産物てやつ?まぁそんなとこだ」


「それ凄いやつなんだよ! お父さんが教えてくれたんだけど……神の産物ってこの世に存在しない伝説の物なんだって! 貸して貸して!」


「…まぁいいけど。落とすなよ?」


「はーい!」


興味津々な彼女に押され、渋々スマホを貸すエビ。


「凄い!……でもなんて書いてあるか分からないな……うーん」


スマホを顔から近付けたり遠ざけたりする彼女。段々と薄ら笑いを浮かべ――


「あっ手が滑った!」


近くの川にぶん投げた。


「ああああああああぁぁぁ!」


「おいこらてめえ何してくれとんのじゃああ! あれなかったら旅なんざ出来んのやぞおのれ!」


「落としてはないよ!」


すまし顔でスカッとした勢いで言う彼女に

エビは――


「落とすよりも100万倍タチ悪いわ!」


「いや…そのあんな速さで抱えられたら……ねぇ?」


「まだ根に持ってたんかい! だあああ! 悪かったよ! もう次から怖くねぇようにするから。

もうやるんじゃねぇぞこんなこと」


「はーい」


「ったく……分かりゃいい。とりあえず取ってくるからちょっと待ってろ」


マッハ3くらいの速さで取りに行って戻ってきた。


「防水ついててよかった。ほんとありがとう爺Shock」


これからも負けるな爺Shock!

頑張れ爺Shock!


「さて……とブキブキ堂に……っと」


歩くこと2分。

1尾と1人はブキブキ堂に訪れた。

重い年季の入った扉を開けると軽く優しい鈴が鳴る。


「らっしゃい! ブキブキ堂へようこそ!」


どこか懐かしい声。癖のある雰囲気。

ねじり鉢巻釘を加えて、いかにも宮大工のような江戸っ子爺さんが出てきた。


「えぇと……姉ちゃんと……エビか?見ねぇ顔だなアンタら」


「初めて来たんだよ! お爺さん。すごいー! いっぱいあるよ! これとか! てや!」



「騒ぐなコットン。お前にそりゃデカすぎだ。……爺さん。早速悪いんだが、何か装備を探しに来たんだ。なるべく安いやつを頼む」


(なんだ冷やかしか……。安いやつばっかり頼むな旅の連中は――。ほんと商売上がったりだぜいまったく)


「安いやつだとこんなもんか? 銅と…鉄の剣とかどうだ? 中々耐久性には優れててな」


「あぁ……中々良い奴じゃないか。他にもないか?なんか軽い……軽い……軽………ん?」


視界に偶然入った物。

それはこの世界に到底あるとは思えない物。




鈍器「フライパン」だった――


…to be a continued


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