第8尾。負荷無味「マイナス・テイストレス」
『
急に真面目な声になるワダツミ。
「あぁ……確証は持てないが、だいたい分かる。つまり……アレだろ。調理すればするほど不味くなるって奴だろ」
『ご名答。実はそれだけじゃない――。それはアンタと彼女が正反対だって事でもあるんだよ』
「正反対? どういう事だ?」
『アンタの
英語の『tasteless』は不味い。又は無味という意味がある。
『一方は調理すればするほど美味しくなる。もう一方は調理すればするほど不味くなる。だがこれだけじゃない――』
「まだ他にあるのか?」
『実はね。
「おいそれどういうことだ!? それって―」
『だから言っただろ? 対になるって。つまりそういう事さ。アンタは
「まさかそれって…全てが真反対って事か?」
『正解。いや半分正解だね。正確に言うとまだ不明な所がわんさかある。この真反対がどこまで適用されているのかは分からないね。でも少なくともアンタは思い当たるとこあるんじゃないかい?』
「あぁ……。沢山あるな。それも出すぎて嫌になるほど」
(反対か。一旦整理しよう。まず俺とコットンの性別。そして生い立ち、俺は両親を失っている訳でもなかった。逆に死んだ側だ。だがコットンは家族を失った。そして能力も反対で)
嫌という程、気持ち悪いと思える程、彼と彼女は真逆だった。
紅と白。甲羅と綿。
性別。生い立ち。そして能力――。
そして彼は海老、彼女は人間。
食われる側と食う側。
これは運命か? 神のイタズラか?
いいや違う。これはそんな言葉で片付けられる程簡単では無い。
『どうだい? 少し整理はついたかい?』
「まぁ……少しはな。ありがとな婆さん」
『待ちな。まだこの話は続きがある』
「まだ他に何かあるのか?」
『あぁ。さっきまではまだ前座に過ぎないよ。今から話す方が本題だね』
「おいおい勘弁してくれよ……。これよりでかいのがまだ残ってるってか」
『あぁそうさね。アンタ前に軍の奴と戦ったってかボコボコにしてたろ?』
「それがどうしたんだ。生憎俺は
『はぁ…。違うよ違うんだよスカポンタン!』
「は? スカポンタンってなんだよ?」
『そのままの意味さ! どうセアンタの事だ。軍に目を付けられてるからって彼女を置いてこうって考えてるんだろ?』
「そうだけど……それが不味いのか?」
『まずいも何も、少しは察しがつかないのかい!ア ンタの彼女は不味くなる能力持ってて、両親も亡くしてるんだよ? そして能力にマイナスが付く……』
「おいおいおいおい! それって婆さん。コットンと離れちまったら……」
『あぁその通りさ。彼女は《不味》を呼び続ける。不幸を呼び続けるって訳さ。つまりほっとくと死ぬ事になるんだよ!』
エビは一瞬心が凍った。
頭が処理しきれなかった――。
心が裂けそうになった――。
彼女が背負わされた能力。あまりに静かで理不尽な現実を突きつけられている。
ようやく我に返ったエビは、怒りで心を溶かした。
「じゃあどうするんだよ! ほっときゃ死んじまうってことだろ? 俺は使い物にならねぇ能力しかねぇし、俺にどうしろってんだよ!」
『だからアンタと彼女は反対だってさっきから言ってるだろ!! つまり彼女が不味を呼び続けるならアンタは美味を呼んで打ち消せばいい。考えたら分からないのかい!』
「つまり……俺がコットンに居続ければいいって事なのか?」
『そういう事だよスカポンタン。全くアンタは世話が焼けるねぇ……。それに彼女の能力は能力と言うよりかはアクに近い物だ。どういった方法かは分からないが、確実に取り除けるはずだよ。探してみるといいさ。』
「あぁ……ありがとな婆さん。俺、コットンと旅に出る。能力取り除いて、そんでもって帝国ぶっとばす!」
『その心意気だよ!頑張りな!』
「じゃあな。婆さん」
『待ちな! 100万ワルサ、振り込んどきなよ!』
「は? ちょっと待っ」
ワダツミはぼったくりを超えるほどの金を一瞬で請求し、瞬く間に電話を切った――。
「ふざけんじゃねええぇ!! くそBBAあ゛ぁ!」
彼はスマホをぶん投げた(3回目)
さてさてどうなる事やら。
……to be a continued
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