第5尾。どんなに辛くても前を向いて生きろ。

彼が出した謎の物体。黄金の液体。美しいだけで片付けられない程の曲線美。神々が産み落とした産物。それはマヨネーズ。



どの世界においても、脂肪を持て余す物だけが食べる事を許されたと言っても過言ではない食べ物。その名もマヨネーズ!



どんなに廃棄物のような不味い料理でもこれかけときゃ1発でプロの味に早変わりの万能調味料。それこそがマヨネーズッ!!!


マヨネーズこそ正義! マヨネーズこそ至高!



マ ヨ ネ ー ズ こ そ が 最 強 う ゛ ぅ ゛!




……長くなりそうなので一旦マヨネーズの蓋は閉じてしまおう。


「ちゅるっ……ずっ……ズルっ……。何これ凄く美味しい! こんなの食べたこと無かった…。ありがとう。こんな高価な物貰ってよかったの?」


マヨの味に感動したのか涙を流すコットン。


「あー……。まぁ気にすんな。何せこっちは命助けて貰った身なんだ。それに比べたらまだ安いもんさ」


「でも……これほんとに油入ってるの?そんなに味もしつこくないけど……」


「たりめーだ。そもそも油入ってないとマヨネーズはできないからな。それにしつこくないのは植物油脂を使ってるからだ。動物油脂もあるがそっち方が濃ゆい」


「へぇ……詳しいのね……。」


そんな事を呟きながらマヨネーズを吸う彼女。

彼女が恐らくこの世界で始めてマヨネーズを食べた女だろう。


「つかどんだけ啜ってんだ。あんまし啜ると太るぞ」


「ばっ……馬鹿!か弱い女の子になんて事言うの!! 酷い! ふんだもう許しませんからー!」


「いや俺を担いできた時点でか弱くはねぇだろ……」


「うるさいうるさいうるさい!! バーーッカ!!」


あまりの恥ずかしさに彼女は顔を赤くし食器を彼の顔めがけて投げた―――!


「ぶべらっ……。って食器投げんな!! あともうちょっとマシな反論なかったのかよ…」


「ふーーんだ! もう許しませんから! もう絶対何も話してあげませんからぁー!」


「ちょっ……馬鹿お前!! それは理不尽すぎんだろうが! 分かったから!あともう1マヨあげるから!!」


「1マヨってなによ! さては私にそれを食べさせて太らせようって魂胆ね? そうはいかないからね!! 絶対食べませんからね!! っていや!!」


「グホウッ……。理不尽すぎんだろうが! もうどうにかしてくれええーっ!!」


海老と綿の第2ラウンド勃発。勝利の女神が微笑むのはいかに――。



――しばらくして


「女の子に失礼な事言ってすみませんでしたは?」


「はぃ……すみませんでした……」


「え?聞こえないよ?」


「は、はいぃ!! 女の子に失礼な事言って申し訳ございませんでしたあ!!」


「よろしい」


この時、絶対に敵に回しては行けないと理解したレッド・チリーであった。


「……で本題なんだが、帝国の方針って何だ?」


「そう言えばまだ言ってなかったわね。帝国、それは聖ヴァンツァー12世が統治する国なんだけど、ヴァンツ帝国。私達は帝国って呼んでるわ。その皇帝が飛んだ暴君でね。国民から物資を絞りとってるの。」


「そりゃまた飛んだ暴君だな」


「挙句の果てには皇帝の文句を言った人は全員処刑されたわ。おかげで村も若いのは私一人だけ。私の父も母も全員殺された。私に手を出そうとしたけど、父と母が身代わりになった。夢も壊された! もうどうしたらいいか分からないの!」


「……その時に俺に出会ったと?」


「えぇ……。何もかも壊されてもうぐちゃぐちゃ。何がしたいのかもう分からなくなっちゃった。もう…このまま生きたって何も変わったりしないんなら、もういっそ―――」


「馬鹿言ってんじゃねぇ」


「……え?」


「確かに分かるさ。家族を殺されたんだもんな。痛いほど悲しいよな。死にたくなるよな。だからといって言って死んでいいのか?違うよな?」


「貴方に私の何が分かるって言うのッ!?」


「分かるわけねぇだろ。そりゃ俺はお前自身じゃねぇし」


「……ふざけてるの?」


「ふざけてねぇよ。ただ分からなくても分かり会えるだろ? お互いにって話さ。そりゃ俺は親は亡くした訳じゃねえし。こんな山奥に住んでる訳じゃねえ」


「何が言いたいのよッ! からかいならもうどっか行ってよ!」


「別にからかいたい訳じゃねぇし。お前の言ってる事を理解して慰めたい訳でも無ぇ。ただ俺が言いたい事はな、死ぬ暇あんなら前向いて生きろ。ただそれだけだ」


「生きてても何も意味ねえってか? そりゃそうだわな。それはそう思ってるからさ」


「何よ……」


「いいか? 人生って思った通りになんだよ。

何も意味ねえって思ってりゃ意味の無いままなんだ。だが逆はどうだ?意味あるって思ってりゃな、人生には転機ってもんが自然と訪れてくるんだよ」


「それが1秒先か2年後なのかは俺にも分かんねえ。ただ信じてりゃいつかはくんだろ。」


「ぷっ…ふふっあははははははっ! あーはっはっごほっ……ゲホッ」


「なんだよ!! 何がおかしい!!」


恥ずかしい事を指摘され甲羅よりもさらに赤くなった


「いや……だってねぇ?海老が立ってカッコつけてるんだよ?それにそれ無茶苦茶な理論じゃん!面白すぎるじゃん!!」


「……るせぇな!!真面目にこちとら話してんだ!まぁ受けおりだからなちょっと無茶苦茶なんだよ」


「ごめんごめん! ……でもありがとう。なんかスッキリした。私、もっと前向いて生きてみる!レッチリさん!」


「略すな! その呼び方やめろ! まぁその……コットンの悩みが解決したならいいんじゃねえか?」


某バンドのような略し方をされ嫌悪感を示すも

ポリポリと顔をかいて照れるエビ。


「さて、今からどうするか……ここの村の食料難もどうにかしないとだしな」


「えっ!? 手伝ってくれるの?」


「まぁな、助けて貰った恩だ。まぁちょっと食料は少し分けてもらってもいいか?」


「もっちろん!! だけどっ恩とかそういうのやめて!困った時はお互い様!いい?」


「あっ……あぁ」


紅と白。1尾と1人。そんな二人の仲が深まったようだ。


「あのさ……レッチリさん!」


「何だ?」


「もし……このまま―――――っ!?」



その時である。バンッという重たい金属音と共に、銀の弾丸が白を貫き、白を赤く染めた。


「コットン!! おい! しっかりしろ!!コットン! コッットオンンンンっ!!」


白い純白の綿は赤く染る――残酷に。

暖かい陽の光のような彼女はもういないのかもしれない。





……to be a continued

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