第4尾。少女と道であったら気をつけろ
「近くに村があるとは聞いたが、全く見つからないな。まずいな。婆さんから貰った食料も底をつき始めてるし、スマホも圏外だし、どうするか……。」
ワダツミとの別れから2日が経つも、一向に村が見つかる気配がない。スマホで探すも「爺」Shockなので回線の速さはお察しの通り。
不眠不休で道を歩き続けること丸2日、いくらワダツミに体力を上げてもらえても、彼の体には、かなり疲労が蓄積していた。
「はぁっ……はァ、ゃっ……と道っぽいそれが出てきた……。やべぇな……気をしっ……か」
彼の体は限界を迎えようとしていた…。
それも当然。寝ないと誰だってそうなる。
いくら最強の能力を持っても、いくら不老不死のキャラでも、風邪をひかないわけじゃない。
疲れないわけじゃない。どんなに無敵の魔王でも、体の管理を怠ればそれ相応の仕打ちが返って来る。
それは異世界でも君が今いる世界でも同じ。
どんな世界でも自分自身が主人公で、ラスボスなのである。
……彼の意識は途絶えた。真っ暗に。
地面に横たわった海老。彼の二つの黒い玉の目は既に輝きを失っていた。
そこにたまたま通りかかった白い髪の少女。
「な、な、なななにこれぇぇ!! でっっっかいえびだああ!!」
驚くのも無理はない。だって伊勢海老だもの。大きなごちそう。しかも高級食材が、森の中で横たわってる事なんてそうそう無い話である。
「今夜はごちそうかぁ……。焼いてっ……いや生で食べるのもありかなぁ……。んぅっ! いやいっそ質屋にうっちゃってお金儲けってことも……。いいや売るなんてもったいない!! ……ん゛うっ」
今すぐにでもかぶりつきたい衝動を抑えて海老の処遇を考える少女。
「ええい仕方がない! 早いとこ村に持って帰っちゃおう! 取られるのもなんだし!!」
シュババッと海老を脇で抱えて一目散に村に帰った少女。彼女の怪力っぷりはさておき、彼の運命やいかに……。
…数時間後
「ん……んっ……はっ!! 俺は!? んぅ? はっ? ここどこだ? ……テーブルの……上?」
「きゃあぁぁぁぁぁ!! 海老が喋ったあぁぁ!! オバケエエェェ!」
突如動きあがったエビに少女は度肝を抜かした。そして片手に持っていた包丁を……。
光よりも速くぶん投げた───。
「うおぁぁぁ!! ちょっ、ちょっと何しちってくれちゃってんの!!俺食べ物じゃないんだけど! 人に刃物投げちゃ行けないって教わらなかったのかよ!?」
海老の真横スレスレに包丁が突き刺さった。
さすがに真っ赤な海老でさえ真っ青になってしまう程に。
「どうしちゃったもこうしちゃったもないでしょ! 貴方こそなんなのよ!! 海老が立って喋ってるとか魔物以外の何者でもないじゃない!」
「くそぅ……海老という点を指摘されたらぐうの音もでないな……。だ、だけどっ!! 魔物だと決め付けるのは良くないだろうが!!」
「……だって怖いじゃん!! 見た目怖すぎるじゃん!!」
「くぅ……。」
……プリプリ怒る彼女。それを見て何コイツ可愛いと思ってしまい怒れない彼。1人と1尾の口論バトルは彼女の勝利で幕を閉じた。
───しばらくして。
「私はコットン! コットン・ヴェルナーレ。コットンって皆は呼んでるわ。貴方の名前は?」
(あぁ…名前か…そういや前の世界の名前でよかったのか?いやここで新たに決めとくべきか…どうする?)
前の名前か今新たに決めてしまうかどうすればいいか脳裏で迷う彼。
「……何よ。名前……忘れちゃったの?」
心配そうに上目遣いで見てくるコットン。
その優しくフワフワな胸のコットンで癒しt…。
「いや……悪い。少し考え事をしてた」
(仕方ない……この姿で人間の名前名乗るのもおかしいだろうし、新しく名前決めるか)
「俺の名前………名前……名m……んー名前ねぇ。そうだ! 俺の名前はチリー。レッド・チリーだ!」
「名前無かったの? ……まぁいいわ。よろしくねチリーさん。その……悪かったわね。貴方を食べようとして。はぁ……久々のご飯だったのになぁ」
…彼女の腹の音が鳴る。彼女は顔をしょんぼりさせて顔を赤くさせた。
「分かってくれればいいんだ。食われそうにはなったが結果助かったんだ。礼を言わせてもらう。……ところで街はどこにある? こんな山奥にあるんだ。かなり遠いはずだろう?」
「えぇ。かなり遠いわよ。しかも夜になると魔物が沢山出るから、余程の事がない限り街に行く人はいないわね。」
「やっぱりな……。となると食料、装備が大量に必要だな。丁度食料が底をつき始めているんだ。どこか食料を買い揃えれる店はないか? 出来れば保存食がいいんだが……」
「悪いんだけど……生憎私の村ももう食料がないのよ。帝国の方針で全部持ってかれちゃったの。抵抗しても殺されちゃうし、抵抗しなくても全部持って行かれちゃう。今日だって――」
……涙を流し、手をぐっと握り締める少女。
よく見ると彼女の服装もかなりボロボロだ。
倒れてる彼を見ても食べたくなるのも無理もなかったはず。
――そんな彼女を見て海老は
「なぁコットン。そいつらどんな奴か教えてくれないか? あとこれ食っとけ。」
「……これは?」
「助けて貰った礼だ。これすすっときゃしばらくはどうにかなんだろ」
彼が出した物。それは何にでも合う
…to be a continued
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