「海は青いね!」「赤く染めてあげようか?」

「ところで姉さん、手掛かりって何処を探すんですか?こういう事情に詳しい人が少ない気が……」

朝食を食べ終わると、気になっていたことを口にした。

「そのことだけど、私に心当たりがあるの。三人とも、遠出するから準備してきて」

こうして、生まれ育った家を後にした。長い旅路になるとは露知らず。


目の前に広がるのは、吸い込まれるような深い青。空気を吸うと、磯の香りが肺を満たした。

「ってことで海に来ましたー!」

「「「急展開過ぎる!」」」

「諸君!今からアマナツ島へ引っ越します!荷物はさっき送っときました!」

「「「急展開過ぎる!」」」

横暴な姉さんに待ったをかけたのは、以外にも内気な詩乃のだった

「……待って。おにいを元の姿に戻したいのは詩乃も同じ。だけど千春は身勝手。もっと皆の意見を聞くべき。そもそもどうやってその島に行くの?飛行機にしろ船にしろ、そんな大金、家には無い」

「確かに詩乃の言う通り。前もって説明しとくべきだったよ。ごめんね、テヘペロ!」

反省の色を見せない姉さんに対し、梨乃は怒りが頂点に達したのか、

「……千春、海の藻屑になりたいの?」

「梨乃、あそこに殴りやすそうな流木あるよ」

鬼すら殺せそうな梨乃の殺意籠もった視線、ナイスアシストをかます詩乃。何故か姉には手厳しい双子によって、綺麗な砂浜が赤く染まる未来が見えた。

「ちょ、タンマタンマ!今からちゃんと説明するから!」

姉さんはゴホンと軽く咳払いし、

「えっと、今から向かうマウアナ島っていうのは魔法文化が盛んな島で、そこならそらを元に戻す手掛かりが見つかるかもしれない。確証は無いけどね。あと、アマナツ島には私の魔法で行くから、お金の心配はしなくていいよ」

ふんわりとしたプランで心配は絶えない。でも、金銭的問題が解決した今、最も気になること。それは、

「魔法!瞬間移動ですか、それとも空を飛んだりするのですか!」

自分も使えるかもしれない、魔法についてだった。

「フフッ、聞いて驚け!私の魔法、それは……」

ゴクリ……!梨乃や詩乃も、皆が固唾を飲んで見守る中……。

「筋力変換!」

「「「…………」」」

姉さんの魔法は、あまりにも拍子抜けする魔法名であった。

「……なんですかその魔法」

何もない所から炎を突出させたり、好きな所に転移したり等と、ファンタジーを想像していた自分にとって、理解するには充分な時間を有した。

「私の魔法は、魔法力を筋力に変換することが可能なのです!」

「……で、ねーさんは脳筋魔法とやらで、どう行くつもりなの?」

そう、問題はそこだ。魔法効果上、穏便に到着するのはかなり難しいのでは……?と訝しむ自分達とは裏腹に、

「右手に梨乃、詩乃。左手にそらを担いで、海上を走る」

姉さんは、呆気からんと無理難題を言い退けるのだった。

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