第6話 慢心・創痍

たった一体の敵に満身創痍になって帰ってきた2人。彼らは急に持った能力に浮かれていたのだ。決して最強になれたとか軽く考えていたとかでは無い。モンスターにも命があり、自分らだけでなく、相手も全力で来るという事実をさっき思い知らされたのである。


1時間ほどそんな事を考えながら、能力について話をした。よく見ると経験値もしっかり貰えている。

「今日はもう1回行って1レベル上げて帰ろうか」

「そうねっ基本的な情報は貰って帰らないとこのままでは引き下がれないもの」

そうしてビッグフットを2体ほど屠り、時は夕方と化していた。

「ふぅ、単体でいるのを見つけるのが大変だったな」

「そうね、やっぱ団体で安心しときたいのよ今安全区でいる人達と同じよ」

安全区の人とは東京のラインの内側で絶望する人々のことである。

Lv上がったけどステータスが変わったぐらいだし何か新しいそこまでの変化はなかった。能力もレベルアップはしない。恐らくこれは鍛錬によるものだろうと2人で仮定した。

「じゃ、また明日ねっ」

スイはそう言うとその口調とは裏腹に少し疲れた顔をして帰っていった。


翌昼、朝はさすがにきついので昼過ぎに集まり(と言っても2人だが)また森へ行く。

そんな時だった。

「おい、君たちぃ2人でどこにいくんだぁい」

モンスターよりも不気味なキザ男が話しかけてきた。

「(ちょっと誰あれ?知り合い?無視しよあれ)」

とスイが小さい声で伝えて来たので賛同しかない俺は従った。

「この魁夢(かいむ)様が一緒に行ってやろうと言うんだぁ君たちも反応したまえっ」

如何にも厨二ぽい名前だが実名で登録されてるはずなのでこれはただの誹謗中傷になる。やめておこう。と思ったのだが。。。

「なにその厨二病感溢れる名前は気持ち悪いっ」

スイ。それは言うな。ほら見ろよ、魁夢のあの顔。さっきまでのキザ顔が崩れてきてるじゃないか。

「特別に君たちに俺様の能力を教えてやろうかっ知りたいだろ?」

「いや別n」

「僕の能力は「薔薇」さ!この俺様に良く似合う能力だろ」

と僕の言葉は半ば遮られながら能力を見せつけた。地面から棘がでてくる。その薔薇の匂いもやはり良い。少しクラクラ来る。これが能力か。

「判断能力を奪われるような良い匂いと攻撃的なその薔薇は如何にもという感じだな」

「そうね。でも似合うという所はガテンがいかないわっ」

スイ。また痛いとこをつくなお前は。

仲間にするとは言っていないが粘着してくるので放って置いた。

「(一応戦力になるし最悪盾にすればいいわ)」

とどうしたんだと言いたくなるほどこの数秒で性格が変わったかのような言い方をする。兎にも角にも今日は異様な人物と森へ進むことになった。

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