第7話 ラスト

 ドーン、ドーンと胸をつくおそろしい音に、ひゃっと飛び上がったユーグレナ。笑いながらカイエルは、

「花火ですよ。そろそろ、芸人たちのダンスや音楽が披露されるんです」

 町の真ん中、噴水のある広場。タンバリンを手にした赤い髪の女や男たちが、目をキラキラさせながら躍り込んできた。ふわり、ふうわりと跳ね跳び、バック転し、美しい歌声をひびかせている。真昼の太陽が白から金色に変わっていた。声はますます大きくなり、やがて町じゅうの空気をビンビン言わせるほどになった。高らかな歓びの笑い声。光が地に降り注ぐ。噴水から、ダイヤモンドの粉のような水がはじけていく。町の向こうに見える山々のつらなりが、青白く光って見える。芸人たちはさまざまな服を着ていて、仕立てたばかりのような鮮烈な色をしていた。しかもそのダンスと言ったらどうだろう。このダンスが終わってしまったら、きっと渇望のあまり自分は死んでしまうとカイエルは思った。

 そのときだった。ユーグレナの姿が、徐々に変化していったのだ。

 まるで氷がとけるように、ユーグレナはとけていった。そして、残されたのは。

「アンジェラ!」

 カイエルは、衝撃を受けた。

「サクンタラ神にお願いしたのよ。神を演じるより、こうして、あなたとデートがしたかったの」

 アンジェラは、微笑みながら言った。

「これから祭が始まるわ。最高の夏至祭になりそうね」

 

 

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夏至祭 田島絵里子 @hatoule

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