第6話 夏至祭その日に

カイエルは、ジャンピング・リザードの肉を売っている屋台に足を向けた。

「ここの肉は、サイコーなんだ! 試してご覧よ」

 ユーグレナは、串を見ると驚いたようになったが、上品にそれをほおばった。じゅっと肉汁が溶け、柔らかい肉がほろりとほどける。熱い肉は舌の上でヤケドしそうだ。

「ほんとうだわ! すごいわ!」

 ユーグレナは、目を丸くして言った。

 その様子は、どことなく、アンジェラ姫を連想させた。カイエルは、少し良心にとがめた。今まさにアンジェラは、命の危機なのに、自分はこんなことをしている。いいのだろうか。

 しかし、ユーグレナの愛らしいこと。カイエルは、心が揺れている。アンジェラはかわいいが、病気である。健康で美しいユーグレナのほうが、魅力的だ。

 ユーグレナをつれて、町の真ん中まで出てきた。ちょうど催し物として、イリュージョンが行われていた。イリュージョンは、さすが市民が一年かかって準備しただけあって、蝶が飛び、花が舞い散り、妖精や小人たちが虹を放つきらびやかなものだった。

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