第4話 市民たち、奮い立つ


「最高の夏至祭? そんなバカな」

 勇者カイエルは、まともに相手にしなかったが、市民たちは奮い立った。

「よーし、これまでにない、すごい夏至祭をやってやるぜ」

「アンジェラ姫が、気力を取り戻せるようなものにしよう」

 市民たちは、アイデアを出し合った。

「屋台の食べ物を工夫して、姫も食べたことのないような、おいしい料理を出そう」

 屋台のおやじは、腕をまくった。

「たとえば、どんなのだ?」

 肉屋が聞くと、屋台のおやじは、

「伝説の国オースティンにあるという、二本足のジャンピング・リザードの肉を、串にして出す!」

「ジャンピング・リザードの肉?! そんな貴重な肉を料理できるのか?!」

「ジャンピング・リザードの肉と言えば、王侯貴族もめったに食べられない高級食材じゃねーか!」

 市民たちは、口々に騒いだ。

「俺たちも、負けてられないな」

「よーし、オレはお菓子で勝負だ! 生地を練って色を塗り、姫の人形を作るぞ」

「わしは、イリュージョンをしよう。空いっぱいに、女神の使いの蝶を放ってやる」

 一度は中止に追い込まれたためか、反動で市民たちのやる気は燃え立つようであった。そうして、カイエルがブツクサ言う中を、いよいよ夏至祭がやってきた。

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