彗星のゴン太

 幼稚園にゴン太という友達がいた。なかなかの乱暴者で、いつも誰かを叩いて泣かせていた。僕も何度か泣かされたことがあった。

 ある日、幼稚園に行くと、ゴン太君が泣いていた。いつも誰かを泣かせていたので、いい気味だと思ったが、あまりに泣くので理由を聞いてみることにした。

 すると、オレは実は別の惑星から来ていて、今日の夜に帰らなくなったのだ。夜になったら、彗星に乗って帰るのだと言った。

 幼稚園児だからと言っても、そんな馬鹿げた話は信じたりはしていないのだが、信じたふりをしてあげた。

 夜に母親が彗星がきれいよと言うので、一緒に見た。

 次の日、幼稚園の先生が、ゴン太君は家庭の事情で引っ越ししたのだと言った。ゴン太は彗星に乗って本当に帰っていったのかも知れないと思った。


 あれから10年ばかりが経ち、僕は高校生になっていた。朝から担任が転入生を連れてきた。

 ゴン太だった。

 担任は、ゴン太に僕の隣に座るように指示した。

 ゴン太は、僕を見ると、彗星は周期的に地球に接近するのだと照れ笑いをした。

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