ビキニの彼女
エミリは、赤いビキニを身につけ、鏡の前であれこれとポーズを取ってみた。自分で言うのもなんだが、悪くないスタイルだと思う。豊満なバストに、きゅっと絞られたウエスト、ヒップのサイズは小さめだが、それはそれでタイトなパンツを履いたときには抜群に似合う。鏡の前で胸を寄せてみながら、男性の反応を想像してみる。きっと世の男性は、この姿を見たら嬉しくなって飛び上がるに違いない。
しばらく色々とポーズを決めていると、エミリは以前よりも少しだけお腹に肉がついているような気がしてきた。つまんでみると、確かに肉の厚みが増しているようだ。ダイエットをがんばらなきゃな。エミリは、鏡を見ながらつぶやいた。
テレビをつけると、眼鏡をかけた男が映し出された。
「おはようございます。今日も頑張りましょう。まずは、軽く屈伸をしていきましょう」
テレビに、CGで作られた女性が映し出され、男の声に合わせて屈伸を始めた。エミリはCGに合わせて、屈伸をする。
「一、二、一、二、はい、もっと深く膝を曲げましょう」
エミリは、男の声に従い、膝を深めに曲げていく。
やはり運動不足だな。屈伸だけでこんなにきついなんて。エミリは、毎日のエクササイズの必要性を感じていた。
CGの女性が、左手を軽く下ろし、右手を高く挙げた。次の動きが始まるようだ。エミリも、あわてて右手を高く挙げた。
「右手を大きく振ってみましょう。遠くの人にわかるくらいに。ゆっくり振ります。いーち、に、いーち、に」
エミリは、右手を大きく、ゆっくりと振る。
「はーい、次はしゃがんで手のひらを上にして、腕を伸ばしましょう。そして、腕を上下に軽く動かします。一、二、一、二。もっと手首の力を抜いてみましょう。一、二、一、二」
エミリは、CGと男の音声に従い、動きを続けた。このような動作が一時間ばかり続き、終わる頃にはエミリは軽い筋肉痛を感じていた。
「はーい、お疲れ様です」
「お疲れ様です。ありがとうございました」
エミリは、テレビに向かって話した。
「いやー、いい絵が撮れたよ。サイコーだね。波打ち際で、彼氏に水をかけるシーンなんて、撮っていて、ドキドキしちゃったね。さてと、あとは、こちらの仕事だから任せてちょーだい。ハワイの映像とバッチリ合わせておくよ。サイコーのイメージビデオができるちゃうね」
「よろしくお願いします。高梨さんのお仕事は処理がリアルなので、いつも楽しみなんです。あのー、一つだけお願いがあるのですが、ウエストが少し気になるので、ちょっとだけ加工をお願いします」
「エミリちゃんの頼みなら、聞かないわけにはいかないな。その代わり、今度ご飯に誘っちゃうからね」
男はニヤニヤと笑った。
グラビアの撮影も、リモートになって以来、ずいぶんと楽になった。でも、プロデューサーに気を使わないといけないのは以前と変わらない。
早くグラビアしないでもいいぐらいの有名人になりたいな。そのためには、ダイエットをがんばらなきゃな。がんばれ、エミリ。
エミリは、鏡の中の赤いビキニの女にエールを送った。
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