第2話 真実

~ブリタニア百科事典 ①~

【エルフ】

 ユーラの中央に存在する強大な国、ゲルマニア帝国に多く住んでいる。

 耳が長く尖っていて、外見がそれなりによく、長命とされるで有名な種族。

 筋力は比較的弱く、肉体的な耐久力も低めだが、手先の器用さや身のこなしは得意で、戦争の際は敵戦線を迅速に突破し、すぐさま敵陣地を制圧することで知られ、周辺諸国では恐れられてきた。

 プライドが高く、他の種族との交流はあまり盛んでないが、エルフの性質と共存できる相手(ドワーフ、人間など)との交流を持つ事は多い。

 長命な分、気は長く、頑固で保守的な性格が強い。

 エルフが記録されているもっとも古い文献では『アールヴ』と呼ばれる美しく強力な妖精が現在のゲルマニア南部に定住していたと、エトルリアの偉人の伝記で伝えられている。そこから『エルフ』と呼ばれるようになる、

 元々定住していた場所は北方にあるスエビ海付近の場所で、そこから南下を始め、現在の場所に定住したそうだ。




 ――――俺は今、銃を向けられている。

 しかも、可憐な金色の髪とエメラルド色の目を持ったエルフの少女にだ。

 なぜか俺は治療をしてあげたのに、ある事で俺は今、殺されそうになっている。

 その理由は俺が『日本人』だからであると。


 「ままま待ってくれ!!何故日本人だからって殺されるんだ!?」

 「黙りなさい!! ニホンジンは見つければ確実に殺す事が決まっているのよ!」

 「だから、俺は誰かは知らないが、そのお前らが言っている日本人とは違う!信じてくれ!!」

 「命乞い? でもそんなことしても駄目よ、貴方はここで今すぐ死ぬのよ!」

 「なら、その日本人が恨んでいる理由ぐらいは聞けないのか?」

 「………ふん!仕方ないわね。いいわ、死ぬ前にその話をしてあげる」 


 話してくれるんだ、意外と物分かりのあるエルフだな………。 

 俺はこの世界の惨状を彼女の話で知る。

 人間中心による亜人支配単一国家の崩壊、新しい亜人国家の誕生、度重なる人間との争い、戦争による転移日本人による出来事や活躍に悪行、日本人による魔族の侵攻、そしてユーラ諸国で日本人を魔族と認定、人間による亜人国家の襲撃、人間による日本人の支配権を獲得するためのユーラ大戦など………。

 だが、待てよ?

 こいつが話している最中のこの状況って今、逃げれるのではないか?

 こいつ、話に集中して俺を見てないし、いけるんじゃね?

 そう考えた俺は物音を立てないように静かにその場を逃げる。


 「………少し長すぎてしまったけど、これでわかったかしら? あなた達は素直に帰ったら問題が……って、いなぁああああああい!!」

 

 そんなに遠くまで逃げられないから近くの路地に隠れてたが、

 ふっ、そりゃ殺されると分かって逃げたり隠れたりしない奴がどこに居るんだよ。

 と言うか、何してんだよこの世界の日本人は!

 この世界の人たちも苦労してるし、まったくファンタジーの世界に勝手に介入するとか……いや、異世界系のラノベってそういうやつだったな。

 それにしても話を聞くとこの世界に日本人は大勢いるように聞こえるけど。

 もしかしたら、帰った人とか居たりして、帰れる方法があるかもしれないな。

 ………そういえばこの話考えてみると、俺この世界に来たばっかだから一切関係ないよね。

 この世界で暴れた日本人でもないし。

 よし、ここからすぐに逃げよう、もちろん音を立てないように。

 彼女をほっといて俺は無我夢中にその場から逃げようとした。

 その時、彼女の叫び声が聞こえた。

 

「きゃああああああああああっ!」


 俺はすぐさま立ち止まり、彼女の方をを振り向くと、彼女の黄金色に輝く髪の毛をぐしゃっと無造作に掴んで嘲笑あざわらう兵士がそこに居た。

 

「こいつ、腕を怪我しているが上玉だぞ!」

「っ痛い!手を放しなさいよ!あなたどうなっても知らないわよ、あともう少しで私達の援軍が来るはずよ。君達も早く撤退することね!!」

 

 彼は女エルフ兵の話を聞くと、突然口を大きく開け、高笑う。

 

「何よ、何が可笑しいのよ!?」

「残念だな、ここはもう俺達エトルリアの領土だ。お前らの軍隊は撤退したぜ?」

「う、嘘よ!」

「嘘じゃないぜ、さっきお前らの陣営から撤退する命令が出ていたのを見ていないのか?」

 

 それを知った彼女は自信満々な顔がすぐに恐怖と絶望に満ちていた。

 その顔を見た兵士はまた高笑いし、彼女の白い頬にに彼の手で持ち、彼女の顔を彼の顔に近づけて言った。


「今日からお前は俺の奴隷だ、安心しろ俺が可愛がってやるからよ」

「くっ!殺される方がよっぽどマシよ!!」

「誰が殺すかよ、こんな美人をよ!! ギャハハハ!!!」


 彼女は泣きそうで嫌そうな顔をして、違う方向に目を逸らす。

 敵が周りに居ないからか、その兵士は戦場のド真ん中で大声で笑う。

 

 これがこの世界の現実か。

 人間に捕まった亜人種の捕虜は奴隷になり、周りにいる彼の仲間かも知れない怪我している者は治療せず無視し息絶えていく。

 そして無力な俺は、ここで逃げるのか………。

 俺は………俺は!そんな怖がりなダサい男にはならねェ!!

 俺はこの世界に何かしらの事で呼ばれたのだろう。

 それが今じゃないのか!?そうだろ!!?違うかっ!!!


「女の子を粗暴に扱うなと言ってるだろ、このクソヤローがぁあああ!!!」


 俺はその兵士に対して罵声を浴びせる。

 女エルフは俺を見ると、驚いた表情をしていた。

 その兵士は俺の言葉に表情を歪ませていた。


「に、ニホンジン、何で戻って来―――イタイっ!」

「ニホンジンだと?? ニホンジンがこんな所に派遣されていたっけ………? まあいい、おい、ニホンジン。今、俺を侮辱するような言葉が聞こえたが、気のせいだよな?もういっぺん言ってみろ、ただの間違いなら上官には言わないでおこう。」


 こいつ、俺を同じ国の兵士と勘違いしているな?

 じゃあ、遠慮なく言ってやろう!


「ああ! もう一度言ってやるよ、女の子を粗暴に扱うなと言ってるだろ、このクソヤローが、ってなぁああああああ!!!」 


 それを聞いた兵士は激高し、彼女を地面に投げ、俺に早歩きで近づいた。

 彼は拳銃を手に取り、俺の額に突きつけた。


「本当に言うとは思わなかったよ、もう良い、ここで死ね。ニホンジンの分際で、貴様らなんか人間様の言うことを聞いておけば良いんだよ、呪われた種族が!」


 ……待てよ、何かがおかしい。

 さっきと違って俺は銃を突きつけられてるのに体が震えていない。

 というか恐怖を感じていない。

 この世界に来て頭がおかしくなったかな?それとも怒りが恐怖に勝ったのか?

 ………いや違う、これがきっかけで多分俺が強くなったんだ。

 ヤバい、今なら突きつけられた拳銃も取れるような気がしてきた。

 だが、どうする?

 俺は奪い取る方法なんて知らない。

 だが、何故だろうか?体が勝手に動くようだ。

 俺の体はどういう訳か拳銃の取り方が分かっている様だ。


「おい!聞いてんのかコラッ!」

 

 それを彼が言った瞬間、俺は左手で彼の拳銃を持った手首を曲げ、拳銃をもぎ取る。

 そして俺は彼の腹を強く蹴り飛ばした。

 ソイツは数メートル吹き飛ばされ、その場で体を丸め、腹を押さえていた。

 俺はソイツから取り上げた拳銃の銃口を彼の頭に近づけた。

 

「おい待て、い、今のは冗談だぜ? ウッ………こ、この事を上官に報告しないから、何ならあの女エルフをお前と楽しんでもいいから、な? それで良いだろう??」


 俺は本当に殺していいのかと考え、一瞬撃つのを躊躇ためらおうとしたが、その発言に俺は堪忍袋の緒が切れ、撃つことを覚悟し引き金に指を置いた。

 そのとき、彼女は近くの落ちているライフルを取って彼に数発の銃弾を浴びせた。

 後ろから撃たれたため、前に銃を向けた俺の方向にソイツは倒れてきた。

 ソイツは即死だった。

 彼女はほっとしたのか、ライフルをその場で落とし、膝から倒れ、そして仰向けになって倒れた。

 俺は死んで上に乗っかっている男を退かし、彼女の方に急いで近づいた。

 


 ――――良かった、息はある。

 だが彼女は安心しているのか、俺の人生で見た事の無いような幸せそうな顔で倒れている。

 この子、戦場に慣れてないのか?

 かくいう俺も戦場なんてゲームとかでしか慣れてねえし、だから今でもこの場所は吐きそうな気分になる。

 だがそんなことを考えてる場合ではない、死んだ彼が言ってたように彼女の敵、つまり俺たちの様な人間が近くにやって来る。

 だから、彼女を俺はここで放っておくことはできない。

 そうだ、急いで彼女を背負ってその場から逃げよう。

 俺は一人の命を、人生を助けたんだ、それだけで俺は十分なのだろう。

 そして俺は彼女を背負って屍が転がる地獄のようなこの光景の場所を俺はすぐにその場を去った。

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