どこかの大学の祝辞
飲みの席で小耳に挟んだ話です。ベロベロに酔っ払ってたのに今でも鮮明に覚えてるくらい深い話でした。ひょっとした拍子にその大事な記憶が転がって見失わないようにここに残しておきたいと思います。
恰幅のある学長はネクタイの位置を直し、新大学生と向き合った。マイクを近づける。
みなさん。入学おめでとうございます。早速ですが
あなたの目前には「壺」、「大きな石」「小さな石」「砂」「水」があります。目的は、順序よく壺を満タンにすることです。まず、あなたは壺の中に「大きな石」をいれるでしょう。次に「大きな石」で満たされたら、その隙間を「小さな石」で埋めるはずです。まだ隙間があることに気づく。それで「砂」を注ぎ込む。そしてあなたは最後に「水」を入れて壺を一杯にするでしょう。
入学したての生徒は困惑した表情を向けながらも、徐に頷いた。
これには表と裏の教訓があります。
学生たちが体を乗り出すのを感じた。一瞬の静けさの後、学長は続けた。
表の教訓は壺を短い時間で考えた時、思いの外どうにかなるということです。例えば試験日までの時間だとしてみましょう。あなたはこれからバイト、恋愛、サークルなど、嫌でも大学という雰囲気に呑まれて色んなことに手を出していくと思います。もしかしたら壺でいう「大きな石」が勉強ではなくサークルになるかもしれません。しかし、壺でいう「水」のレベルでいいから時間を見つけて勉強したとします。するとどうでしょう。きっと成績は置いといて試験には合格できるはずです。過去の生徒でもそのように合格する生徒を見てきました。ここで大事なのは勉強の良し悪しではなく、やるかやらないかに差が出るということです。勉強という選択肢を常に持っておいてください。これは勉強以外にでも言えることですが、話すと長くなるので割愛します。
内容が勉強のせいか、集中力が切れ始めていることに気づいた。しばらく時間をおく。妙な間が、学生を再び学長の話を聞く体制へと戻した。
裏の教訓は、壺を人生という長い時間で考えた時の話です。ずばり無謀なことに挑戦しよう。先ほどあなたは目の前にある人生という壺に最初に放り込んだのはなんだったか覚えてますか?「大きな石」だったはずです。なぜなら「水」「砂」「小さな石」を先に入れると「大きな石」が入らないからですね。あなたの壺には今、何も入っていません。空っぽです。しかし、卑下することではありません。なぜなら、あなたはこれから何にでもなれるのですから。ゆえに、あなたには大きな石を壺に放り投げ続けてほしいです。大学を卒業するとしがらみがあなたを包み、行手を阻みます。何歳でも挑戦できると言いますがそれは半分本当であり、半分嘘です。なぜなら挑戦することに対する反対因子が増えるからです。家族、ローン、車、家。挙げだすとたまったもんではありませんね。意外と人生はあっという間です。私も気がつくと62歳。人生太く、短く活きてほしいです。
みなさんの顔を見て、私は安心しました。何かしらのメッセージを受け取った顔をしています。これから4年間という大学生活がスタートします。立ち止まりたくなったら、オフィスにきてください。長く生きてるだけが取り柄のおじさんですが、悩みを解決できる絆創膏をもっているかもしれません。ドアはいつも開いていますので。
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