第16話 「遥か彼方から」
争いは絶えることなく続いていた。
ジルは仲間と共に地下に埋設された研究室で秘密裏に実験を繰り返し行なっていた。
地上では終わりなき戦闘に明け暮れ人々は疲弊しているのだが生きる為、腹を満たす為、争いを繰り返す。
絶望的な食糧難がこの星を滅亡へと誘っていた。
ジルはこの研究所の所長である
他にジルをこよなく崇拝する副所長のミラ彼らが研究目的を達成する為に集められた多目的分野のエキスパートである
研究員のサラ・ビル・モア・シド・ピノの5人総勢7名で試行錯誤を重ねながら研究を続けていた。
この星の住人は鉱物を糧としているのだが資源は底を尽きかけていた。
人類を遥かに超越した科学力を持つ彼らは宇宙船を操り宇宙のあらゆる星を探索して回ったがその甲斐も空しく、食料となる鉱物は見つからず現在に至っている。
現状を知った住人達は鉱物を少しでも独占しようと争い始め奪う者と奪われる者の殺し合いが各地で勃発しこの星を地獄へと変えてしまった。
ジル達7人が研究しているのは肉体を消滅させ、意識だけを残すというもので肉体を無にすることにより生命を維持するエネルギーを必要としなくすることであった。
人類とは違い異様な形状をした肉体は塊と言った方がわかり易いもので地球の10倍の引力により足は退化し、移動は反重力意思の伝達はテレパシーで感情そのものを伝達空間に仮想の映像を自在に描き時間を切り取ったり繋げたりすることが出来るこれらはこの星で生きていく為の進化であった。
彼らは新たなる進化を科学に寄って実現しようとしているのだった。
「ジル、準備出来ました!」ミラが伝えると「よし!実験開始するとしよう」ジルが答える。
その時である情報収集の為、遅れて入って来たシドが慌てて言った
「研究所に敵が押し寄せて来ます!」頷いたジルは「もう時間が無い!」
「総員、配置に着け!実験開始!」
唸るモーター音と共に激しく振動を繰り返す装置は轟音と同時に眩い光を放つ!
光の中で7人の肉体は細かい粒子となり宇宙船と共に猛烈なスピードで舞い上がった。
争うことしか知らぬこの星の住人は彼らを果て無き宇宙に放り出した末に滅ぶだろう。
数千年の時を宇宙でさまよい続けた彼らはやがて地球へと辿り着き日本と言う国の一部で神と呼ばれる存在となる。
争うことが無益であると知り尽くした彼らは人々の手の届かぬ場所で平穏に暮らした。
彼らは規則を尊び自らを戒めた
人々の体内に宿り暮らしを学び知ろうと努めた。
学んだ知識は保管庫に納められ門外不出を原則とし決して手の届かぬ場所にあるはずであった。
滅びた肉体から解き放たれる魂を次の宿りし場所へと誘う為に・・・
そんな彼らのふとした不注意で事態はとんでもない方向に発展して行く。
果たして何があったのか?
それは知るべくもなかった。
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