第12話 「応用訓練」

「さあ、もう寝るわよ!」

机に向かい勉強を終えた未来が背伸びをしながら僕に言った。


一方の僕はテニスボールを前に悪戦苦闘していた

「まだ動かせないの?」 

僕のそばにしゃがみこんだ彼女がいとも簡単に質問する。 


小声で話してるとはいえ、いつものことだが距離が近い!


「そんなに簡単に動かせる訳ないだろ!?」

言葉は乱暴だが口調は穏やかに言った。


未来と僕が同じ部屋で過ごす様になってからもう2週間が経過しようとしてる・・・

彼女は想像力や応用力に優れていて色んなことを僕に教えてくれたし僕が幽霊であることを逆転の発想に変えて応用する方法を考え出す!

まさに有能な司令塔さながらに僕は使われている。


自分が生きてるか死んでるかの意識を変えることで様々な可能性があることを立案し実際に僕はドアや壁を自分の意思ですり抜けることが出来る様になっていた。


更に今度は生きていると思うことでテニスボールが動かせたり投げたり出来ると言い出し僕は訓練中であった!


「さあ、また明日にしましょ!?」

未来はそう言うとベッドで横になった。


最近では僕が幽霊だとはいえ彼女と同じベッドで寝ている・・・

実体がないのだから別にどうってことはないのだが机に飾ってある未来の彼氏の爽やかな笑顔を見ると何だか心苦しい。


僕は未来の隣りで横になった、照明を消した部屋は真っ暗でとても静かになる。


彼女の寝息を聴いてると何だかドキドキするが心地良い!

そんなことを考えていると隣りで眠ったのかと思っていた彼女が突然、こちらに向き直り言った!


「お尻とか触らないでね」


ん・・・!?


僕はベッドから飛び起きると

「僕はまだそんな能力は持ってないぞ!」

剥きになって言ったので声が大きくなったがどうせ僕の声は彼女にしか聴こえない。


いきなり何てことを言うんだ・・・

恥ずかしくて顔が真っ赤なのは鏡に映らなくてもわかる・・・


そんな僕を見て彼女はいたずらっぽく笑い

「冗談よ!・・・でも訓練になるのなら触ってもいいけど!?」

そんなことを言うと「じゃあ おやすみなさい」

そう言って向こう側を向いた。


「そんなこと言った後で僕が未来の隣りで眠れるか!?」

僕はふてくされた素振りで床に転がった。


「どうでもいいけどそんなとこで寝るつもり・・・早くこっちで寝なさいよ、おやすみ」

背中を向けたままそう言って布団を頭から被った。


起き上がった僕はわけの分からない言葉をブツブツ呟きながら隣りで横になった。


「おやすみ・・・」と言ってはみたけど彼女を意識してなかなか眠れなかったが背中合わせで寝た振りをする。


どれくらい時間が経過しただろうか?


眠ってるはずの隣りで泣き声が聴こえてきた・・・

未来が泣いている!?

彼氏とも上手く行ってないみたいだしきっと寂しいのだろう?


明日は少し彼女の話を聞いてやるか!?

そう思いながら僕は自然と眠ってしまった。

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