第7話 「待合せ」
ちょっと早く着いたかな!?
公園に入り時計台に目をやり時間を確認しながらそう思ったがもうすぐ5時になるので待つことにするか・・・
時計台へと歩きながらこれまでの状況を少し考えてみることにした。
今朝、そこのベンチで目が覚めて何となく大通りまで歩き彼女と出会いこの公園でまた会う約束をした。
何故!?
彼女には僕が見えたんだろう?
霊能力者なのか!?
どこまで話してくれるか?
どれだけ知っているのか?
それはわからないが彼女と会ったら聞いてみよう!
電機店で知り合った同じ死者という境遇の彼は明らかに僕を探していた様な気がする。
彼が話してくれた神殿みたいな場所での体験話は嘘などではなく真実を語っていた様に僕に思えた・・・
きっと彼は大切な人の元に戻って何かを伝えようとしているのか?
知識をすべて手に入れた彼にはそんなことが出来るのだろうか?
もっと聞きたい!
もっと知りたい!
記憶も無くあちこちをさまようだけの自分は一体・・・何者なのだ!?
何か意味があってここに戻って来たのか?
彼が飛び込んだという池のことを僕は何も覚えていない。
僕が目覚めた今日が最初の1日だとすれば残された時間はあと29日だけ・・・短い様な長い様な漠然とした気持ちが苛立たしくもある。
僕はこれから何をすべきかを決めて置く必要があるのではないか?
沈みかけた太陽が空をオレンジ色に染めてく様に焦りと不安が自分の心に広がりつつあった。
時計台の影が長く伸びた頃、彼女が向こうから走って来るのが見えて僕は安堵感を覚えた・・・何だろう?
この気持ちは!?
表現しようのない不思議な気持ちが僕の心に浮かんで来る。
「ゴメンね!随分、待たせちゃった!?」
急いで走って来たのだろう、激しく息を切らしながら彼女が言った。
振り向いて時計を見るともう6時を過ぎていた
「いいよ、ちょっと考え事してたんで大丈夫さ!」
「走って来たんだね?」
彼女は息を整えようとしているのか胸にカバンを抱いて深い息づかいでこちらをじっと見ていた。
「もっと早く来るつもりだったんだけど遅くなっちゃった!ゴメンね」
今朝とは全然違う雰囲気で話してる気がするが2度目だからなのか?
「そんなに謝らなくてもいいよ」
実際、途方に暮れていた僕には彼女が約束通りに来てくれたことが嬉しかった。
「じゃあ行きましょうか!?」
最初から決めてあったかの如く彼女が言った。
「えっ!どこに!?」
不意をつかれた様に僕が聞き返すと彼女は
「勿論、私の家に帰るのよ!」
「今夜もまたここで寝るつもり?」
当然でしょ!?みたいな顔で言った後に続けて
「さあ着いて来て、歩きながら話しましょ」
・・・と先に歩き出した。
また口調が今朝の彼女に戻った・・・
僕は苦笑しながら着いて行くしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます