第3話 「孤独」
「さて、これからどうするか?」
死んで幽霊となった自分の声が誰にも聴こえないことはわかっているし他に誰も居ないことを知りながら声に出してみる。
何となく彼女が言ったことは理解できたが・・・実感が湧かない
目覚めてからの記憶を確かめる様に僕は歩いて来た道を公園へと引き返し始めた。
大通りまで歩いて来た時と比べれば人通りも多くなった様な気もするがただ漠然と歩いて来たので人影に気付かなかっただけなのかも知れない。
ほんの少し歩いただけで公園はすぐに見えて来た
目覚めた時は気にも留めなかったが意外と広く、大きな時計台は確かに目立つ存在で目印にした彼女の判断は適切だった。
自分が目覚めたベンチを横目で見ながら時計台の方へ歩いて行く・・・
9時が近くなった時間で犬を連れて散歩している人やジョギングしてる人などを見ながら公園の中央を真っ直ぐ時計台へと向かう。
太陽を背に歩いている自分の影が無いことに今更ながら気付きちょっと暗い気分になるのを振り切る様に前だけを見て歩いた。
高さは5mぐらいだろうか?
白く塗られた時計台は所々が変色して近くで見ると古い物らしい。
「ここら辺りで待つことにするかな?」
呟きながら側に設置してあるベンチに腰掛けてみた。
右手の方から3歳ぐらいの男の子とお母さんであろうかと思われる人がこちらに歩いて来るのが見えた・・・
はしゃぎ声をあげながら走る男の子をやや小走りで追いかける母親がすぐ近くまで来たのでベンチから立ち上がり挨拶の姿勢をとる。
男の子は僕の前に走って来たがスピードを緩める気配もなく
「危ないよ!」と声を掛けた僕をすり抜けて行く!
母親も同じく子供を追いかけすり抜ける・・・!
そうか!僕は見えないんだ!?
そう思った瞬間に涙が溢れ出した・・・
何という孤独感・・・僕はここに存在さえしていないのだ!
偶然、出会った彼女の存在がとても大切なものなんだと思った。
泣き崩れてしまいそうな自分を彼女の姿想い出すことで何とか支え右袖で涙を拭きながら高くなり始めた太陽に向かい僕は歩き出した。
彼女が言った通りに街の中を探検してみよう!
何一つない自分には前に進むしか道がないんだと心に決めた。
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