第2話 「出会い」

見れば高校生?


彼女はちょっと周囲を気にする素振りをし視線で路地の方へ促した。


僕は落とした小銭を拾い上げ促された路地に歩いて行く

彼女は僕の後ろから着いて来た。


「貴方、珍しいわね」

何が珍しいのかわからないがやけに僕との距離が近い!

セミロングのサラサラした黒髪が風に揺れてほのかな香りがする。


いきなりの突拍子もない彼女の言葉に返答できない僕を見て言った・・・


「死んでるのよ」

続けての言葉に「エッ!?」僕は意味が理解出来ずにいた。


「貴方は死んでいるの!」

更に顔を近付けてゆっくりと彼女が囁やく様に言った

「貴方は私にしか見えていないの」

近くのショーウインドーをまたもや視線で促す。


僕は促す方向を見て愕然とした!

彼女の姿が映っているガラスに自分の姿が映っていないのだ。


何かのトリック?どっかのドッキリカメラ!?

彼女とガラスを交互に見比べている僕から少しだけ離れて

「独り言みたいに聴こえてしまうから

大きな声では話せないの・・・」

恥ずかしそうに視線を落とす。


一方的に喋るかと思えば突然、恥じらいを見せる

何だか不思議な魅力があるし結構、可愛い顔をしてるっていうか顔立ちは綺麗だ・・・

思わず僕も視線を落とす。


今はそれよりも何故、死んでる僕が彼女に見えるのか!?


こうして普通に会話できるのか?


それに僕の何が珍しいのか?


そもそも僕が死んでるってどういう事なのか?


一体、僕はいつ死んでしまった!? 

覚えていない・・・

考えてみれば何一つ記憶がないのだ。


だが彼女は何かを知っているのかも!?

しかしこんな状況で何から聞けばいいのか?

自分の想像を遥かに超えた展開に僕は彼女だけが映るショーウインドーを虚ろに見ながら漠然と何をすべきか考えてみた。


「君の名前は・・・?」

考えた末の質問がこんな問い掛けになるとは自分でも驚いてしまった。


自分の名前さえわからない僕が最初に知りたかったのは彼女の名前だなんて他に質問すべきことは何かあるんじゃないか?

そんな僕の心を読み取ったのではないかと思うほどに彼女はうつむいたままクスクスと笑った後で答えた。


「私の名前はフジサワミク」

僕を見ながら小首を傾げ続けて言った

「宜しくね!幽霊さん!」

ドキッとする様な可愛い笑顔である。


顔が赤くなってないかと心配しながら立っている僕の周りをゆっくり廻りながら

「私は学校があるからバスに乗るけど・・・

終わったらまた会いましょ!」


「この近くに公園があるから時計台の下で待っててくれる?」

僕が歩いて来た方向を指差しながら言った。


約束というよりは当然の如く彼女は決めていく

「5時ぐらいには来るから街でも探検して覚えといてね」

僕の返事も聞かず次々と伝えると大通りに向かい歩き出した。


何か言わなきゃ!

そんな気持ちで彼女の後ろ姿を見送る僕に彼女は振り向いて言った!

「約束したよ!」 

僕に示した右手の小指が立っていた。


苦笑いしながら左手の小指を立て

「わかったよ!必ず待ってるから!」

何となく彼女につられて差し出した小指をかざしながら彼女の姿が見えなくなるまで見送った。

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