- 約束の場所でもう一度 -

新豊鐵/貨物船

第1話 「目覚め」

「う~んっ!?」

まだ肌寒い日差しの中、僕は目が覚めた。


周囲をゆっくりと見廻す

公園のベンチかぁ・・・!? 

なぜこんな場所で眠っていたのだ?

しばし考え込む・・・・


何かが微かに浮かび上がろうとするが何故か思い出せない。


僕は誰だ!? 


何も思い出せないのだ!

取り敢えずベンチから身を起こし立ち上がった


ゆっくり歩きながら体を動かしてみる

少し気怠い様な感じはするが痛む箇所もない

どれくらいの時間、眠っていたのかわからないが硬いベンチで眠っていたのだから仕方ないだろう。


ジーンズにチェックのシャツ、パーカーのジャケットにスニーカー

後ろのポケットに財布があった!


中身を調べてみるが身分証明書的な名前がわかる様な物は一切、入ってなかった。


公園に掲げられた大時計は8時を少し過ぎている

朝なのか!? 

それさえも疑問に思える今の自分に哀れさを抱く

公園を出てしばらく歩くと大通りに出た。


ここまで人影が無かったのではないが誰も僕を注目する人もなく自然とここまで歩いて来たのだ。


ふと立ち止まり財布をポケットから取り出し小銭を握った

温かいコーヒーでも飲み落ち着いて考えようと思ったのだ。


自販機の前に立ち小銭を入れようとした瞬間・・・

後ろから誰かがぶつかった!

自販機と抱き合う格好で僕は自販機にぶつかる。


「チャリーン!」

手からこぼれた小銭は転がって行く。

ぶつかった相手はこちらを振り返りながら上着をポンポン叩き、何事も無かったかの様に歩き去って行った。


謝罪の言葉もないのかよ!

無性に腹立たしかったが落ちた小銭を拾おうと前かがみの姿勢をとった瞬間、またもや押された!


今度は自販機に頭突きした格好で

「ゴンッ!」


「痛っ!」

さすがに今度は痛かった。


ぶつかったのは体格のいいおばちゃんで僕の方を不思議そうな目で見ながら何も言わず先を急ぐ様な足取りで歩いて行った。


「何だぁ!?この街には常識の欠片もないのか!」

気の弱い僕は小声でそう呟きながらぶつけた頭をさすった。


「フフッ」その時小声で笑うのが聴こえた。

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