第13話 肉湯術その②

『いや、あの………』

デュマは戸惑う。


『やりますよっ。』

ローレライが答える。


『おい!!あっ』

言いかけてデュマはローレライの手を引いた。


そして小声で耳打ちした。


『お前が「やります」って言うからにはってことだよな?俺勝つんだよな?』


『わかんない。』


『はっ!?』


『言おうか迷ったんだけど、このお寺に来てから未来のビジョン見えないんだよね、おかしいなー。』


『おかしいなーじゃねえよ!!てか迷ったら早めに言え!!』


『なにをこそこそ話しているんだい?仏前で隠し事謀り事は法度だよ。』

言って梅尊は立ち上がり、笑っている。


そして息を思い切り吸った。


『昌尊ッッッ!!!!』

それは大声と言うより爆発音と言った方が適切な位の大声だった。

(こいつどんな声量してんだよ?!)デュマは耳を押さえている。



『は………はい…!』


先程の少年が駆けつけた。



『遅い!呼ばれたら全力で駆けつけなさい。を持ってきなさい。』


『は……わかりました!』


十数秒で少年は戻ってきた。

手には大層重そうなを抱えて。


『ん~、早かったね昌尊。重かったろうに。上出来だね。』

梅尊は先程と打って変わって満面の笑みで少年を撫でまわした。


『ご苦労様。もういいよ。』


そう言うとそそくさと少年は退散した。

そして梅尊は向き直って言った。

『この国には飴と鞭と言う言葉があってね。時にはわざと叱りつけ、そしてなんでもないことで誉めちぎる。それが教育過程で多大な効力を生む。君らの国でもそうかな?…っはは。どうでもいいかね?』


梅尊は勝手に捲し立て、笑っている。


そして棒を床に突き立てた。


床は、まるで凍った水面のようにひび割れた。


(なんちゅう重さ?!)


『さて、私はを使うつもりだが、君らはどうする?』


『…ライ!なんか武器ないの?』


『ない。ごめんね。』


『くぅぅぅー、使えないやつ!』


『はっはっはっはっ!よろしいよろしい!これを使いたまえ!』

そういって梅尊は懐から小さな剣を取りだしデュマに放った。


『それは脇差しといってね。説明すると長くなるがまぁ、れっきとした日本刀だから安心なさい。なまくらじゃあないよ。』


『……ライ、やるべきだよな?』


『うん、デュマなら勝てるよ。』


二人は頷き合う。


デュマは脇差しを構えた。



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