怪僧・梅尊
第11話 日本到着
『ここでいいか?』
ヘイルは田畑に囲まれた平地に着地した。
『うん、お疲れ様!』
ローレライとデュマはヘイルの背から降りた。
『ではまた呼べ。』
ヘイルは一度消えた。
『なーんもねぇ所がちょっとシャンティに似てるな。』
『そうだね!でもこっちは今の時代はまだ戦争がないから平和だよ。』
『ほえー、なんでもしってんなライは。で、ヘイルの息子の墓っつーのは?』
『
『なるほど、で、どこ?』
『ん?わかんない。』
『ん?なになに?なにが?』
『どこだか全くわかんない。ビジョンは見えるんだけど、道程が複雑すぎて見てると頭痛くなっちゃうから誰かに聞いて連れてってもらおう!』
『…行き当たりばったりだなお前。』
雨粒が鼻先にぽたと落ち、二人は空を見上げた。
◇
二人は登りに「だんごや」と書かれた店にいた。
『あんたがた何処から来なさったね。』
一人で切り盛りしているのであろうエネルギッシュな女将が声をかけた。
『リオダールですー。
『あれー、そりゃ遠いとこから!んもうお姉さんなんて年じゃないやね!やだねー、もう一本いかが?』
満更でもなかった様子だ。
『いただきまーす!』
『…な。おい。』
店員の目を憚るようにデュマがローレライに小声で話しかけた。
『…支払い……どーすんだよ?…』
『むしゃむしゃむしゃむしゃ』
ローレライは無視して食べ続けている。
『いやむしゃむしゃじゃなくてよ。』
デュマは落ち着かない様子だ。
『おいって!』
『…あー美味しかった!』
『こら!』
デュマは身を乗り出す。
『うるさいなー。てか残してんじゃんお行儀悪いなー。』
『このソース苦手なんだよ!』
『これ醤油って言って、これ苦手だと日本だは飢え死ぬよ?』
ローレライは優雅に茶を啜った。
『まじかよ?!全部この味なの!?勘弁だわー…。ってそうじゃなくてよ!』
『…大丈夫!僕かデュマか分かんないけど、超強運持ってるよ。』
ズズっと音がなった。
『あ?』
『いらっしゃーい。』
戸が開くと同時に店の女将が反応した。
自国とあまりに違う接客の姿勢にデュマは驚かされた。
袈裟姿の男が暖簾をくぐった。
もっとも二人は「袈裟」も知らなければそこから「僧侶」を連想することはなかった。
男は黒淵の眼鏡に、頭は剃りおとされた
『いやー降られた降られた、これだけ降られた男を、おトキさんまで《フラ》ないですよねえ?』
袈裟の男は女将の尻を撫でた。
『このエロクソ坊主!!』
女将のフックが男のこめかみに入った。
『いやー、元気でなにより元気でなにより!
おトキさん、昆布茶とみたらしね!』
女将は然程憤慨している風ではなかった。
『ありゃ、君らは海外の方かなあ?』
袈裟の男は断りもなくローレライの隣に、即ちデュマよ向かいに腰かけた。
『はい!お墓参りに!』
ローレライが答えた。
『そりゃ感心感心。近頃じゃ日本の若者は仏壇にすら手を合わさないってのに遠路はるばるお墓参りですか。いや本当に感心した。隣の墓は海外より遠いってなことわざが日本にはあるけども──』
『お兄さんたちまともに聞いちゃだめだからね!適当な生臭坊主の言うことなんか。綾光寺の鼻つまみものって呼ばれてんだからこの人は!』
『綾光寺!?』
デュマは半身に立ち上がった。
『ほーらラッキー。』
ローレライは茶をお代わりした。
『ん?どうしたのかな?少年。』
『ぼ、ぼくらそこに行きたいんです!』
デュマが言った。
『……ほーお。墓参り……。
男は含みを持たせた。
『ご一緒させていただけないっすか!?』
デュマは男の手をガシッと握る。
『…構わんよ!おトキさん、やっぱお団子は包んで!』
奥から「はいよー」と返事が聞こえた。
『それじゃ…行きますか。』
包みを手に男は立ち上がった。
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