第8話 馬鹿者達はそれでも繰り返す

ヘイルは崩れ去った扉のあった、窟と外界の境界を跨ごうとした。


バリィッ

音と共にヘイルの前足、中指の爪が飛んだ。


『ぬ。迂闊。』



『あ、そうだごめん。死なないとここから出れないんだったね。』

ローレライは屈託なく言う。



『まじかよ。方法他にねえの?なんか可哀想じゃね?』

と、デュマ。


『可哀想か。俺も落ちぶれたもんだ。』

ヘイルは無表情である。


『でも殺すにしてもどうやって殺すんだよ?』

デュマは言った。

『おい、可哀想だの言ったのは何だったのだ。』

ドラゴンとは思えない反射神経でヘイルが突っ込んだ。

『うん、眼力で。』

と、ローレライ。


『眼力?お前目ぇ見えないだろ?』


『見えないけど、はあるんだあ。ヘイル、僕の目を見て。』


ヘイルはローレライのめしいた目を見つめた。


数秒後。


ヘイルは昏倒した。



ヘイルは夢を見た。


否、夢の世界に立っていた。


宇宙を思わせる程の闇。


自分の前後の足が何処に着地しているかすら分からない。


そこで、声がした。



「選択せよ」


無機質な声だ。



「天命か転生か」



分からない。どちらを選ぶべきなのだ。


「天命とは授かった生を終わりまで全うすること」



「転生とはを受け入れること」



そうゆうことか。


ならば最早迷うまい。



『転生だ。』





ヘイルの肉体は、封魔庫の扉の様に塵と化した。



『消滅しちったぞ?』

デュマが言った。


『そう、それで今僕のものになる。』


が舞うのをやめた頃、ローレライの喉の少し左側に梵字の様な紋様が浮き出た。


『よしゲットー。それじゃデュマ…ちょっとおんぶ…』

そういって倒れこむローレライをデュマは受け止めた。



『う!?あっつ!お前すげー熱じゃん!』


『うん、召喚熱。しばらくは怠くて動けない。だからもーちょいで兵たちがここまで来ちゃうけどそれまでなんとか地上に戻ろうー。』


そう言って勝手にデュマの背におぶさった。


『もーちょいってどれくらいよ?!』


『ざっと4分32秒。』


『おい、階段て何段あったっけ…?』


『それ言ったらきっとモチベーション下がるから、とりあえずゴー!』


ローレライは力なく拳を振り上げ、デュマは階段をかけ登り始めた。



息を切らし最上段を登り終えた頃、まだ兵の姿はなかった。


『すごいねデュマ!2200段を4分で登ったよ!』


『はぁ…あぁ…はぁ…あぁぁぁ…しば…しばらく……やす…』


『ここで休んでたら階段急いで登った意味ないからね。中庭に出よう!僕も熱が大分下がった。』

そう言ってローレライは、這いつくばるデュマの背から降りた。



中庭は、火の海だった。


何体かのリオダールの兵の骸が黒煙を上げ異臭を放っていた。


『見える?ヘイル。いつの世も人間は馬鹿だね。』


「見えるとも。馬鹿者達は繰り返す。おのが馬鹿さに身を焼かれるまでな。」




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