第7話 バカとドラゴンは使いよう
その一言にデュマは固まった。
『は?!』
『はははははははははっ!!』
笑ったのはヘイルドラゴンだ。
『面白い!!面白いぞお前!!やれ!やってくれ!俺を殺せ!!』
ヘイルドラゴンは内側から激しく扉を揺さぶった。
『うん、殺す。それで契約を結び直す。それで召喚獣じゃなく霊獣として僕らを助けて。』
『霊獣?』
デュマはこの単語についても初耳の様だった。
『うん、霊獣。実態がないから封魔庫もいらないしイコールこんなところに閉じ込められるストレスがないの。良いことずくめじゃない?』
『…それはお断りだ。死語も人間ごときに従属するなど。』
『でも、ここにいても君は一生使い魔だよ?リオの王は君を一生他国への威嚇に使うだけ。狐に威を貸し続ける虎、囚われのカワイソーなドラゴンさん──』
『おい!!』
ヘイルドラゴンは遮った。
『もういい。もうやめてくれ。頼むから消えてくれ。』
ヘイルドラゴンの声は深く沈んでいた。
その語気に怒りは孕んでいなかった。
『子供がいるんだよね?』
ローレライは言った。
『……貴様なぜそれを。』
『会わせせるよ。今ニホンて国にいる。そこに………墓がある。』
ほんの数瞬、場は静寂に包まれた。
『息子は、死んだのか………?』
『うん…ニホンで召喚に使われて。戦争でね。』
『墓が……あるんだな…。』
『ニホン人は信心深いみたい。そして貴方の子は愛されてたみたいだよ。「英霊」と呼ばれている。』
『……行きたい。……その地へ。』
ヘイルドラゴンは静かに言った。
『行こう。ヘイル。』
ローレライは言い、そして扉に掌を当てた。
集中。
そして扉はそよ風に煽られる塵の様にサラサラと消滅した。
『嘘だろ…嘘だよな…』
『見えてるものだけは本当だよ。デュマ。さあ、ヘイル。行こう。』
暗闇の中から、先ず前足が見えた。
大きい。
それは虎の二回り以上はあろうと言うサイズ。
口先が見えた。
肌はひび割れ水気がない。
が、健在な牙が覗いている。
一歩。爬虫類を思わせる流線型の頭蓋。
小豆色した金目の竜。
体長は馬と然程変わりないが広げた翼は大人数人を包み込んだとしても余りあるだろう。
『行こう。外へ。』
ローレライは言った。
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