第6話 敵が来た。そしてヘイルドラゴン。
ローレライとデュマ、ユアダは食堂から飛び出した。
兵士たちは「敵襲」と叫び、歩きながら装備を身につけるものなどでごった返している。
『我々は…どうする。』
ユアダは呟いた。
『…君は君の思うままに従うしかない。大丈夫、間違ってないから。』
ローレライはユアダに言った。
ユアダもなにかを理解したようだった。
ローレライはユアダを残し、デュマを連れて走った。
『お前、ちょっと落ち着けよ、もっとゆっくり!見えねえんだろ?!』
『大丈夫、見えないけど見えるから。』
そして地下への階段へかけ降りた。
『どこ行くんだ!?』
『召喚獣に会いに行く。』
『あ!?』
数十メートルは下ったのであろうか、筒状の踊り場、螺旋状の階段を見上げると灯りも乏しい。
最下層、そこには格子の扉が見えた。
デュマはその扉を押し、引いた。
『開かねえ。』
『詠唱で守られてるからね。』
『なんだエイショ-って?』
ローレライは格子に手を当て、呪文の様な言葉を繰り返した。
デュマが話しかけること憚るほど集中していた。
そして数分後、格子音を立てバラバラになった。
『おぉ!?すげ……』
『ふう、よかった間違えなくて。目が見えないから、呪文暗記するしかないんだよね。不便不便。』
ローレライは笑っている。
バラバラになった格子の扉を通過し数メートル、そこには半円型の扉があった。
ローレライはその扉に話し掛ける。
『やあ。こんにちは!』
中から返事はない。
『こんにちはー!!!
』
返事はない。
『こんにち───』
『うるっせぇえええ!!!!』
鼓膜を破裂させるかと思うような叫びが二人の全身を震わせた。
『なっ、誰??』
デュマは耳を塞ぎつつ言った。
『ここにいるのはヘイルドラゴン君だよ。』
ローレライが言った。
『ヘイル!?やべーじゃん、食い殺されるぜ俺ら!』
『大丈夫だよ。食われやしないよ。』
『なにをごちゃごちゃ喋ってやがる。また戦争か?俺の力が必要か?』
扉の奥でヘイルドラゴンの声がする。
『そう、戦争は起きてる。けど、別に君を戦場で使う気はないよ。』
ローレライは言った。
『ならなんの用だ!?』
『うん、君を僕らの足に使いたくてね。』
ローレライが言うや否やデュマはその口を手で塞いだ。
『ばっ!…おい、怒らしてどーする!?』
『怒ること?だって彼は戦闘向きじゃないよ。最大の長所は小回りが利くことと長時間飛行が出来ることだよ。』
『いやいやいや、こいつにもプライドとかあんだろーし──』
『おい』
ヘイルドラゴンの声にデュマは固まった。
『今こいつ呼ばわりしたのはどっちだ。いるのは二人か?ここから出せ、はらわたを引き裂いてやる。』
『引き裂いてみなよ。ほらどーぞ。』
ローレライは嘲るように言った。
『………去れ。』
ヘイルドラゴンは静かにそう言った。
『おい、どうゆうことだ?』
デュマはローレライに耳打ちした。
『彼は自力では出られないよ。そもそも召喚獣は召喚されないと封魔庫から出れもしないよ。』
『封魔庫?』
『うん、魔界から魔法陣で呼び出された場所。召喚獣はそこから動けない。』
『耳障りだ。何処かへいけ。さもなくば俺を殺してくれ。』
ヘイルドラゴンの声はどこか悲哀に満ちていた。
『うん、そのために来たの。殺してあげるよ。』
ローレライは言った。
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