最高のお祭りと先輩と後輩くん

ジュオミシキ

第1話

「後輩くん、君はお祭りというものを知っているかい?」

「バカにしてるんですか?」

「そうだね。後輩くんも2週間後に行われる“阿鼻叫喚 フラワーフェスティバル”くらい知っているよね」

「すいません、自分の知ってるお祭りとは違うみたいなので詳しく聞かせてください」

「いいだろう。まったく、これだから後輩くんは後輩くんなんだよ」

「なんかすいません」

「いいかい、阿鼻叫喚 フラワーフェスティバルとはその名の通り、屋台や花火で盛り上がるとてもとても楽しいお祭りなのさ」

「まったく名前の通りじゃないのはつっこんだほうがいいですか?」

「許可しよう」

「なんでそんな上から目線か分かりませんが……阿鼻叫喚の要素はどこにあるんですか?」

「屋台がまったく人気がなくて、お店の人が毎年悲惨なことになるらしいよ」

「よくそんなお祭りが続いてますね」

「今年で第5回だそうだ」

「それでも続いているほうですよ。というかお祭りの名前をつける時点で諦めモード全開じゃないですか」

「何はともあれ、そんなお祭りがあることは分かってくれたかな?」

「えぇ、まぁ」

「ちなみにフラワーはお好み焼きに使う小麦粉からとったそうだよ」

「阿鼻叫喚のインパクトが強すぎてすっかり後半のフラワーフェスティバルのこと忘れてました」

「それで今度私は叔父のお好み焼きの屋台を手伝うことになったんだ」

「最初からそれが言いたかったんですか?」

「そんな水臭いこと言わないでくれよ後輩くん」

「何も水臭いとは思いませんが。これが通常運転ですよ」

「それで今度私は叔父のお好み焼きの屋台を手伝うことになったんだ」

「あれ?ループしてる?先輩、分かりました。ちゃんと話を聞くので戻ってください」

「それは話が戻るということかい?」

「おつかれさまでしたー」

「あぁ、待て待て。話せばわかる」

「ちゃっちゃと話してください。余計な前置きはいいんで」

「……。叔父の屋台を手伝うんだけれども……」

「なにか言いにくいことですか?屋台が今年も人気がなくて悲しんでる先輩を慰めればいいんですか?」

「あぁ、それは是非ともお願いしたい……けれど」

「?」

「あぁ、そうだ、そうしよう。…………いいね、是非ともそうしてくれ。具体的にはね、そう、私が屋台の手伝いが終えるのがお祭りが終わる少し前で、私も少しだけならお祭りを楽しめるんだよ。しかし、1人で屋台を回るのもつまらない。しかも屋台が売れなかった悲しみがあり、ますます1人で回りにくい。そこでだ、君も私と一緒に屋台を回ろうじゃないか」

「まぁ、それくらいならいいですけど」

「それは良かった」

「けど先輩、そんなお祭り、手伝いが終わってまで参加する必要があるんですか?」

「あぁ、あるとも」

「なんですか?」

「それは秘密さ」

「はぁ」

「できたてほやほやのね」

「?なんですか、それ」

「君は知らなくていいよ」

「それならいいですけど」


※※※


「それじゃあまた明日」

「はい。お祭りは2週間後でしたね」

「あぁ、忘れないでくれよ」

「はいはい、分かってます。じゃあさようならー」





私は後輩くんの後ろ姿が小さくなるのを見送りながら呟く。


「君は分からないかもしれないけど」


「どんなお祭りでも」



「君といるだけで、それは最高のお祭りになるのさ」

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