第2章 高校生の日常
第28話 暑い春の飼育部
見上げると、雲ひとつない晴れの空。5月もまだ半ば。暦の上では春だが、今日はやけに暑い。
「なあ、ゆかり。今日、いくらなんでも暑くないか?」
いつものように二人で並んで登校する俺たち。こうして手を繋いで、というか、腕を組んで登校するのも慣れてきたが、今日はさすがに暑過ぎる。
「最高気温は30℃だって。暑いよね」
ゆかりも、さすがにこの暑さには参っているようだ。
「それ、もう夏じゃん」
確か、最高気温が30℃を超えると真夏日と言うんだったか。
「でさ」
「何?」
「これ、ちょっと暑くないか?」
「これ?」
「いや、こういう風に腕組むのがさ」
「みっくんは嫌なの?」
いや、そんな悲しそうな目で見られると困る。
「別に、嫌じゃないけど……ま、いいか」
「あ、そういえば」
「ん?」
「ラビットちゃん、大丈夫かな?」
ラビットちゃんとは、飼育部で飼っているロップイヤー(ライオンロップイヤーという品種らしい)のウサギで、名前が英語そのまんまとなんともひねりがない。命名したのはうさぎ班の誰からしいのだが、もう少しまともな名前をつけろといいたい。
「確かに、心配だな。ガメラのやつも干上がってるかも」
ガメラは、爬虫類班で俺が世話をしているミドリガメで、某怪獣映画から名前をとった。
「みっくん、ガメラはやっぱりどうかと思うよ」
と、ゆかりからの苦言。
「ラビットよりはマシだと思うぞ」
「私もラビットはどうかと思うけどね」
ゆかりとしても、その名前には思うところがあるらしい。
「とにかく、ちょっと様子見に行ってみない?」
「だな」
ウサギは汗をかくことができないため、暑さに弱いらしい(ゆかり談)だし、ミドリガメも暑さに弱い。元々、放課後には様子を見に行くことになっていたが、心配だ。
俺達は、飼育部室へ向かって急いだのだった。
飼育部室にて。
「ラビットちゃん、ぐったりしてる」
心配そうに、ラビットが飼われているケージに駆け寄るゆかり。
「ガメラもちょっと元気がないな」
さすがにいきなり水が干上がるようなことはないものの、動きが鈍い。
「すぐにエアコン付けないと!でも、部室のエアコン勝手に付けていいのかな?」
おろおろしだすゆかり。
「俺が確認してくるから。ゆかりは、エアコン付けて、様子を見といてくれ」
「了解!」
職員室に行って、顧問の先生にエアコンの使用許可を願い出ると、部の活動に必要なら、ということであっさりOKが出た。
部室に戻ってみると、エアコンで回復したのか、ラビットは元気を取り戻した様子。そして、ゆかりはというとー
「お、重いよ……!」
ガメラの水槽の水を替えようとしているところだった。
「無理すんな、ほら」
反対側の取っ手を持って、一緒に水を替える。
とりあえず、エアコンを付けて、水槽の水を替えて一段落、と思ったのだが、よく考えると。
「なあ、他の動物もやばくね?」
「……!」
それに気がついた俺達は、慌てて部長に連絡を取って、動ける部員を招集。なんとか、ホームルーム前に、暑さ対策を終えたのだった。
「あー、重労働だった……」
「だね……」
とりあえず一時しのぎの対策を終えた俺達は、部長からの「後は、こっちで考えておくから」との言葉をありがたくいただき、疲労困憊で教室に向かったのだった。
「おはよう。お二人さん。いつも……」
「仲が良く見えるか?」
「い、いや……」
二人して机にぐったりと潰れている俺たちを見て、びびった様子の
「今朝、暑いだろ?で、飼育部に行ったさ……」
そうして、朝の一部始終を話す。
「それは、お疲れ様だったね」
「生き物の世話って大変だよな」
「可愛いだけじゃ済まないんだよね」
そんな、生き物を飼うことの大変さを痛感したのだった。
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