第15話 エッチのお勉強

 一緒にお風呂に入った後。そもそも、俺は根本的なことを理解していなかったことに気づいた。


「エッチなことってどうやるんだろう?」


 もちろん、そういう漫画も見たこともあるし、ビデオも見たことがある。男性のアレを女性のソコに入れてどうこうするとかそういうのはわかる。

 しかし、だ。目の前にゆかりが居たとして、どういう流れでそういう風に持っていけばいいのか、全く想像ができないのだ。考えてみると、ゴムをどうつけるのがいいのか、とかも調べていない。

 婚約者になったというのに、そういうことが全然わかっていない自分のダメさ加減に情けなくなりそうだ。


 というわけで、早速Goo〇le先生に聞いてみることにした。立ち上げたパソコンを操作する。


"エッチ 方法"


 という身も蓋もないキーワードだけど、女性向けのエッチの方法が書かれたサイトがヒットした。


"自分の身体を清潔にするのは相手へのマナー"


 なるほど。そういえば、汗くさい状態で事に及んでいるシーンを漫画で見て、気にならないのか、と思ったことを思い出す。

 シャワーとか歯磨き、とか、言われてみると当たり前だけど、意識していなかった。


 他にも、色々なことが書かれて-


「みっくん。入ってもいい?」


 こんこん、とノックがする。


「あ、ああ。いいぞ」


 何を言ってるんだ、俺は。ちょっと待ってというところだろ。

 そう後悔したが、時すでに遅し。


「お邪魔しまー……え?」


 俺が開いているページを見てフリーズしているゆかり。


「そのページ、もしかして」

「その。さっき、準備できてなかっただろ。だから、ちょっと勉強しようと思ってな。いやそのすまん」


 いくらさっきは良い雰囲気だったとはいえ、直後にこんなこと調べてたら、ちょっと引かれても仕方がない。


「謝らなくても。私も、ほんとはどうすればいいのか、わかってなかったし」

「そうなのか?」

「さっきお風呂で見たのも初めてだったし」

「あ、そうだよな」


 再び気まずいムード。


「だったら。一緒に勉強、する?」

「え、ああ。そうだな」


 そして、なんだかよくわからない流れで、エッチの仕方を二人で勉強することになったのだった。


"明かりを消す?消さない?"


「ど、どうなんだ?」

「さすがに、明るいと、ちょっと恥ずかしいかも」


 なるほど。明かりは消した方がいいらしい。


"下着は自分で脱ぐ?脱がせてもらう?"


「どちらかというと、脱がせてもらいたいかも」

「俺も脱がせたいかな」


 俺たちは一体何をしているんだろう。こういうのは、それこそ本番の時にお互い雰囲気で確認しあいながら、すべきことなのでは。

 というか、ゆかりもなんで応じてるんだ。


「って、ダメだろ。これは」

「ど、どうしたの?」


 いきなり声を上げた俺にびっくりした様子のゆかり。


「いやさ。こういうのは、その時の雰囲気というか」


 エッチな行為をしているわけでもないのに、お互いにするときの好みを告白しているとか、どんな羞恥プレイだ。


「そ、そうだね。ごめんなさい」

「いや、謝らなくても。とりあえず、さ。お互い勉強するってことにしないか?」

「うん。じゃ、じゃあ、おやすみなさい!」


 ゆかりはそう言うと、素早く扉を開けて、飛び出して行ったのだった。


 一人部屋に取り残される俺。この状況を一体どうしたものだろう。

 

(とりあえず、勉強するか)


 さっきのページを読むのを再開したのだった。

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