第4話
さて、突然こんな話で申し訳ないんだけど、万里は可愛い。
先程もした話題だと思うが、まぁちょっと聞いてください。入学して日も落ち着けば、自然と理解することも増え。 桜も散り、緑が青々と……ん? 緑なのに青々? どっち? 見た感じは緑ですが……じゃあ緑で。 というわけでその辺が自然的な意味で緑色になって。
「好きだ」
だけど頭はピンク色、春爛漫みたいな。
季節外れだぞー。
男子校でまさかの告白イベントが発生し、最初はどぎまぎしたけど、もう発生回数が日めくりカレンダーの如く。恋する気持ちを無下にする気は無いんだけどね。
「そういうことはちゃんと本人に言いなさい」
「いや、だからこうして、」
「万里が好きなんでしょ? 僕伝に告白されても困ります」
僕は伝書鳩じゃありません!万里みたく可愛いとこうやって告白されちゃうんだな、まぁ僕は告白されるなんて絶対あり得ないですが。
「いや、猫山じゃなくてお前が、」
「今さら何照れてるのさ、万里がダメなら僕と仲良くなって近付こうなんてのもダメだからね!」
「ちょ、お前が好」
「あぁもう僕忙しいから、万里に直接自分で伝えて!」
困っちゃうよ、こんな使いっぱしりばっかやらされてさ。告白なんてしたことなんか無いからわからないけど、好きな人が出来たら自分で直接伝えたいんじゃないのかな。だって人伝じゃ自分の気持ちを100%伝えることは出来ないよ。好きなら100%の気持ちをぶつけて1%でも可能性を上げたくないのかな。
「前、見て歩かないと転ぶよ」
「ふぇ?」
突然袖を掴まれ、ふと我に帰る。 目の前には下り階段。 危ない、今確実に落ちるところだった。誰かな、助けて下さりありがとうございます……っていつぞやの美しき人!
「あ、ありがとうございます! 先日もお陰様で間に合いました!」
「きちんと登校しているところを見れば、あれから遅刻はしてないんだね」
「はい! 僕凄いこと思いついたんです!」
美しき人に少し屈んで貰い、背伸びして耳元に顔を持ってく。
「時計を、10分早くするんです」
本当は誰にも内緒にして特許とかノーベル賞とか取ろうと思ったけど、美しき恩人には特別先行公開だ。 いつかテレビで有名になった時、存分に自慢して下さい。
「っ……そ、そっか、それは名案かもしれないね」
「先輩は特別真似して良いですよ! でもメディアに拡げるのは僕の仕事ですからね!」
万里にもまだ話してない、僕と美しき先輩だけの大発見。 鶴の恩返しならぬ僕の恩返し。 これで二度救われた僕の命もそれなりの価値は見出だせたんじゃないかな!
「そうだ、二度も助けてもらったんですし、ジュース奢ります」
120円でこの身が救われるんなら安いもんです。 むむ、何を買ったらいいだろうか。無難なとこで、皆大好きといえば……青汁だよね!
「先輩、」
「いらない」
なっ! まさか、遠慮を為さっているのか! 何処までイイ人なんだ!じゃあこの青汁は……頂きます。 先輩にはお茶を。 これ急須で入れたお茶に限りなく近いって大量の板前さんが言ったらしいし、きっと美味しいぞ。
「さっき何か考え事をしてたみたいだけど?」
先輩が踊場の椅子に座ったので、隣にお邪魔する。 初めて会った時から思ったけど微かに良い匂いがする。 先輩って汗かくのかな。
「大丈夫?」
「え、あ! 大した悩みじゃないんです! 毎日のように親友への告白の伝言を頼まれるんですよ、それで」
「へぇ」
「告白って、自分の口で伝えなきゃ意味無くないんですかね」
悩む横顔も美しい。 あぁ僕こんなに近くで独占して良いのかな。 出来ることなら触ってみたい、あのキラキラの出所を探りたい。
「そうだね、ちゃんと自分の口で伝えなきゃ意味が無いよね」
「ですよね!」
「好きだよ」
先輩は、まっすぐ僕を見つめる。
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