第68話 いざ、王都へ
この世界に来てから、今日は33日目だと思う。
早朝、ボクたち5人はギルドでステータスの確認をした。でも、それが完全に無駄だったことを、後になってから知った――。
◆名前:リンネ
種族:人族/女性/12歳
称号:孝の者・銀の使者・ゴブリンキングの友・フィーネ迷宮攻略者・ドラゴン討伐者・女神の加護・魔人討伐者・北の大迷宮攻略者・特別捜査官・ティルス市長
魔法:
魔力:75
体力:38
知力:42
魅力:82
重力:80
「わわっ!?」
「リンネちゃん、どうしたの?」
「ごめん、何でもない!」
本当は何でもあるんだけどね!
ボクの《鑑定魔法》が上級に進化して、凄い情報量が頭に飛び込んでくるようになった。その名も、《
よく見ると、
そして、最も見逃したくても見逃せないのが「重力」! 体重80kgはありえないし、80
これだけは集中して観ても解説が出ない。
みんなのステータスを確認してから考察するしかないよね。
◆名前:メル
種族:鬼人族/女性/14歳
称号:仁の者・青の使者・魔人討伐者・北の大迷宮攻略者・特別捜査官・ティルス副市長
魔法:
魔力:91
体力:80
知力:63
魅力:75
重力:70
◆名前:アユナ・メリエル
種族:エルフ族/女性/11歳
称号:忠の者・金の使者・森の放浪者・女神の加護・魔人討伐者・北の大迷宮攻略者・森に愛されし者・特別捜査官
魔法:
魔力:67
体力:30
知力:35
魅力:76
重力:70
◆名前:レン
種族:ピクシー族/女性/14歳
称号:義の者・赤の使者・魔人討伐者・北の大迷宮攻略者・特別捜査官・学長
魔法:
魔力:59
体力:51
知力:47
魅力:75
重力:70
◆名前:アイ
種族:人族/女性/11歳
称号:智の者・黒の使者・特別捜査官・軍師・魔人討伐者
魔法:
魔力:30
体力:22
知力:83
魅力:75
重力:70
なるほどね!
重力ってのはアレだ、きっと使命の重さ的なもの。召喚石で呼ばれた子が70、呼ぶ側が80なんだね、理解理解!
「さて、行ってきます!」
「「行ってらっしゃい!」」
明け方、ボクとメルちゃんは2人だけで《転移》し、各地で未契約奴隷を購入した。
まずは北端の町ヴェルデ、次に城塞都市チロル。解放した彼らの保護をギルドへ依頼し、奴隷商人の処遇も任せた。
その後、エンジェル・ウィングのアリス団長に会い、支部の設立許可をもらった。成行でアユナちゃんが新団長になっちゃったけど、大丈夫かな?
さらに、北の離島ノースリンクに転移して奴隷2人を購入した。
珍しい狐の獣人だった。ノースリンクにはギルドが無いため、本人たちの意向を確認した結果、ティルスへと連れて帰ることになった。
ティルスでの
その全員にお揃いの軽皮鎧と短剣又は杖を装備してもらった。やっぱり統一感は大事だからね。
結局、そのうちの13人がティルス支部に残り、7人がボクたちと一緒に王都へと向かうことになった。
ティルス支部のメンバーは、しばらくはギルドを拠点にティルスの警護と内閣の補佐をしてもらう予定。
「同行者の皆さん、自己紹介をお願いします!」
「マールです。リンネ様のお役に立てるよう頑張ります!《経理》と、少しですが人の心の表層を読む《読心術》ができます」
「《読心術》?」
「はい。目を合わさないと使えませんが」
「でも凄い! よろしくね!」
◆名前:マール
種族:人族/女性/15歳
称号:なし
魔法:読心術・経理・接客
魔力:6
体力:46
知力:60
魅力:68
重力:55
「リリィですぅ。マル姉の妹ですぅ」
◆名前:リリィ
種族:人族/女性/13歳
称号:なし
魔法:
魔力:11
体力:33
知力:41
魅力:65
重力:40
「リリィさん、《
「ぇ……そうなんですかぁ?」
「知らなかったんだ。コツコツ練習してみてくださいね!」
「はい、ありがとうございますぅ!」
「リンネ様、エルフのアディと申します。アルンから逃げて来る途中で奴隷にされました。アユナ様ほどの《精霊魔法》は使えませんが、ご恩に報いるために尽力いたします」
◆名前:アディ・シャーマンウッド
種族:エルフ族/女性/122歳
称号:なし
魔法:
魔力:26
体力:40
知力:67
魅力:68
重力:50
エルフちゃん可愛い!
あ、訂正! めっちゃ歳上でした。
「アディさん! ぜひ、アユナちゃんのエルフっ娘教育もお願いします!」
「エルフっ娘教育がどんなのかわかりませんが、頑張ります!」
「ドワーフのダフと申す。勇者様には命を救って頂き感謝申す。《斧術》と《鍛冶》をたしなんでいる。宜しく申す」
「《鍛冶》ですか! 素材があるのでいつかお願いするかもです! 宜しくお願いします!」
「もう少しで《鍛冶》が上級になるので、是非に約束申す!」
◆名前:ダフ・ゴルドネリアン
種族:ドワーフ族/男性/88歳
称号:稀代の鍛冶師
魔法:斧術・鍛冶・
魔力:11
体力:86
知力:58
魅力:58
重力:50
「おいらノームのアドーバだっぺ。得意とまでは言えねえが《土魔法》が使えるっぺ。宜しくお願いするっぺ!」
お、小さくてモフっとした男の子!
「土魔法は便利だね! 宜しくっぺ!」
◆名前:アドーバ
種族:ノーム族/男性/17歳
称号:なし
魔法:短剣術・土魔法・臭覚強化・聴覚強化
魔力:15
体力:56
知力:44
魅力:62
重力:40
「クルンです。狐さんです。えっと、リリィちゃんと友達になりました。動物さんと話せます。占いが得意です。よろしくです」
「可愛い!! 可愛い!! 可愛い!!」
「あの~。触りすぎです。私、《魅了》があります。可愛くないのに勝手にモテちゃいます」
魅了!?
◆名前:クルン
種族:狐人族/女性/12歳
称号:なし
魔法:獣話・占術・短剣術・暗視・魅了
魔力:25
体力:34
知力:35
魅力:75
重力:70
「え、可愛いよ? 魔法が得意なんだね。同級生だし、よろしく!」
「僕はクルスです。クルン姉様の双子の弟です」
「双子の弟さん? 確かに似てるね!」
「あっ、僕も……もふもふしてほしいなって……」
「ん?」
「いえ、何でもありません……よろしくです」
◆名前:クルス
種族:狐人族/男性/12歳
称号:なし
魔法:獣話・火魔法・槍術・暗視
魔力:17
体力:42
知力:33
魅力:73
重力:40'
「うん、よろしく!」
(アイちゃん! あの白髪の、
(はい? 可愛いですね。もふもふは私も好きですよ)
(ううん、そうじゃなくて。アイちゃんたちと同じ気がするんだけど)
もふもふに騙されて危うく見逃すところだった!
「重力」というのが、ボクの予想したとおりに使命や運命の重さを表す値だとしたら、この子は――白の使者!?
(聴こえています。なるほど、白の使者である可能性は高いですね)
(でも、誰が召喚したの? 確か、双子の弟君と一緒にノースリンクから連れて来たんだけど)
(それはわかりませんが、なるべく一緒に居た方が良さそうです。アユナちゃんみたいにならないように)
(そうだね。メルちゃんたちにも知らせておいて)
(わかりました!)
「リンネちゃんがぼーっとしてる! 早く出発してご飯食べよう!!」
「あ、ごめん。えっと――どうやって馬車を振り分けようかなって考えてて」
(アイちゃん! さっきの件、アユナちゃんにはまだ内緒ね! 面倒臭くなりそうだから)
(同意見です)
先頭車:ボクたち5人+クピィ+クルンちゃん
後続車:残りのエンジェル・ウィングメンバー
馬車2台の組分けはこうなった。
狐っ娘クルンちゃんがが占いで決めた結果だ。じゃんけんで決めるよりも説得力があっていいよね。双子の弟のクルスくんがちょっと寂しそうだけど。
先頭車の馭者は、メルちゃんとレンちゃんが代わりばんこ。後続車はマールさんがまとめ役になって、今後の活動について話し合うみたい。馭者はドワーフのダフさんとノームのアドーバさんが代わりばんこ。
そして、ティルスの皆さんに別れを告げ、いよいよ王都に向けて出発だ。何だかんだで既に午前11時を回っていた。
「王都に向けて、いざ出発~!!」
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
[レンがパーティに加わった]
[アイがパーティに加わった]
[クルンがパーティに加わった]
[マールがパーティに加わった]
[リリィがパーティに加わった]
[アディがパーティに加わった]
[ダフがパーティに加わった]
[アドーバがパーティに加わった]
[クルスがパーティに加わった]
なんだこりゃ。
12人パーティなんてあるんだね。
★☆★
ガタンゴトン
ガタンゴトン……
心地良い馬車の震動故か、馬車酔いの故か、ボクたちはすやすやとお昼寝タイムを満喫していた。
現れる魔物は低レベルばかり。馭者のメルちゃんの《
時々、黒い矢がヒューンと飛んで行く。《
レンちゃんとアイちゃんは、科学について議論を戦わせている。ボクはそれをぼんやり聞きながら、壁に寄り掛かり、脚を伸ばして夢心地。
太股の上にはアユナちゃん、膝の上にはクルンちゃんが寝ている。脚が少し痺れてきたけど我慢する。
「雨が降ってきました!」
突然のメルちゃんの一声で、全員同時に目が覚めた。
「どこかで雨宿りをしましょう。後続車にも合図を出します」
ほんとだ。音が下からではなく上から聞こえてくる。雨が馬車の幌を打ち付けているようだ。
昼過ぎなのに、いつの間にか空が暗い。と思ったら、あっという間に雨足が強まり、騒音レベルで幌が騒ぎ出す。
「メルさん、街道を南に曲がると洞窟があるみたいですよ」
アイちゃんのナビは相変わらず優秀だね。
「わかりました、洞窟へ一旦避難しましょう」
街道を南へ逸れて約1km進むと、そこには馬車ごと入れるような巨大な洞窟が口を開けていた。
「何だか不気味な洞窟だね」
「魔人の罠とか?」
「いきなりの雨、近くに洞窟……ボクたちは誘い込まれた可能性もあるよね。みんな、気をつ――」
「洞窟の奥に気配4つ!! 50m先です!」
「アユナちゃん、クピィは?」
「鳴いてない! 魔族じゃない!」
少しほっとした。
でも、盗賊のアジトかもしれないし、油断は禁物!
「エンジェル・ウィングの皆さん! ボクたちは奥を見てきます。このまま入口で待機していてください!」
「「はい!」」
ボクたち先頭車の6人は、静かに奥へと進む。
「誰だ!!」
奥から
人間、男性……やっぱり、盗賊のアジト?
「旅の者です。突然の荒天のため雨宿りを余儀なくされました。宜しければ場所をお借りできないでしょうか?」
メルちゃんが用心深く名乗り出る。
「そうでしたか。俺たちも雨宿り中だし、この洞窟は俺の家じゃないから構いませんよ!」
緊張が解けたのか、笑顔で男性が近づいて来た。
後ろに3人が続く。話し掛けてきたのは20歳前後の赤髪の青年。剣士のようだ。他にも、盾持ちの男性と槍使いの男性、ローブ姿の綺麗な女性が居る。装備を見ただけで、実力のあるパーティだとわかる。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさえていただきます」
ボクも話し掛けてみた。
男性陣の視線を感じる。ローブの女性が赤髪の青年に肘鉄を食らわせている。何か悪いこと言っちゃったかな?
「可愛いお嬢さん方、ここでお会いしたのも何かのご縁。宜しければ少しお話しませんか?」
ローブの女性がボクに話し掛けてきた。
アイちゃんやメルちゃんをチラ見したら頷いている。クルンちゃんも。
その後、ボクたちは旅の目的などは伏せながら彼らと情報交換をした。
パーティ『竜の牙』は、これから南へ魔族の討伐に向かうそうだ。
彼らは王都を代表する冒険者で、特にリーダーである赤髪の青年ハルトはS級らしい。ラーンスロットさんやギルドマスターより強いって、相当凄いよね。《
「それにしても、この時期に王都に入るのは失策じゃないのか?」
「政争の件ですか?」
「それを知ってるのに、あんな
「行きたくはないんですが……やらねばならないことがありますので」
「そうか……今は手当たり次第に逮捕される状況だからな。もし何かあれば、ハルトの彼女だと名乗れ。悪いようにはされないだろうよ」
横からローブの女性、レミーさんが杖で頭を殴ってる。あれは痛そうだ。お陰でこちらの女性陣の殺気も一瞬で消えた。
「南には魔族が多いんですか?」
話題を変えてみる。
「あぁ。魔人ガルクというのが魔族を率いて暴れているそうだ。既に近くの町や村は滅んでいるらしい」
「ガルク!」
「知っているのか?」
「わたしが話します。アイと申します。魔人ガルクは魔王直属、魔人序列第5位の虎人族で、推定魔力値300です。正直に申し上げて、国を軽く滅ぼす程の力を有しています」
「300だぁ? そんなに強いのか!」
「ボクたちも協力しましょうか?」
「リンネ様。大丈夫です。私、占ったです。『竜の牙』さんは勝ちます。だからリンネ様は王都に行くです」
クルンちゃん、そんなことも占えるんだ。
メルちゃんもアイちゃんも頷いている。
「人の姿に変身できるという噂もあります。くれぐれも気をつけてくださいね」
「わかった。情報ありがとな。完全に油断してたぜ。よし、絶対に魔人討伐者の称号を手に入れてやる!」
そんなに立派な称号じゃないと思うけど、がんばれー。
その後、夜になっても雨は止まなかった。
結局、エンジェル・ウィングの仲間たちも集まり、洞窟内で夜営をすることになった。
ボクは闇の中を
『…………ネ…………て!』
声が聴こえる。懐かしい声。
ボクは闇の中を声がする方に走る。
『…………ネち……けて!』
近い。
闇を掻き分け走る。
走らなければ見失ってしまう。
『リ……ネちゃん……すけて!』
ミルフェちゃん?
この声はミルフェちゃんだ!
『リンネちゃん! たすけて!』
居た!!
闇の中、闇の檻に囚われてる!
ここはどこ?
ミルフェちゃん!
ここはどこなの!?
「……ゃん! ……ちゃん! リンネちゃん!」
「ん?」
「「良かった!!」」
アユナちゃん?
みんな……あ、夢だったのか――。
いや、あれは夢なんかじゃない!!
ボクは、暗闇の中でミルフェちゃんに会ったことを伝えた。みんなはボクを信じてくれた。
「占いましたです。王宮の地下牢です」
「「えっ!?」」
「王女様は監禁されてるです。でも、何かが変です」
「なぜ!? 政争で!?」
「王女が監禁だと? まさか、
ミルフェちゃんは平和のために頑張ってたのに!
「早く助けなきゃ!!」
「リンネちゃん、無理しないでね。私たちも魔人討伐頑張るから。王都で元気に会いましょう!」
「はい、レミーさん!」
「王都ではギルド内しか安全な場所がないと思えよ。兵士や役人には特に注意しろ」
「ありがとうございます。竜の牙さんも、ご武運を祈ってます!」
明け方、黒々と空を覆っていた雲は薄くなり、暁の光が漏れていた。雨はもう大丈夫。
さぁ、出発しよう!
その後、ボクは馬に《
そのときのボクは、一刻も早くミルフェちゃんを助けることしか考えていなかった――。
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