七日間ビデオ
ふと実家を大掃除していたら幾つかビデオが出てくる。テレビで流れた映画を録画したものだった。懐かしさに、それを見たいな、なんて思って中古ショップでVHSのビデオデッキを買う。中にビデオテープが入っている。
ビデオテープには『七日間』と書いてあって、昔のホラー映画を連想する。ついつい調子に乗ってしまう俺は「またまた〜」なんてこれまた前フリのようなリアクションを一人でする。こういう舐めたことをしていると死ぬ。
でも結局見てしまう。好奇心には勝てない。
再生するとスマートフォンで撮ったかのような高画質で映像が流れ始める。
最初はなにやらラーメン屋だ。カウンター席で目の前に大盛りのラーメンがやってきて、誰かが黙々と食べている様子が映る。
その次はパチンコ、負けっぱなしの様子。
次は焼肉。肉をガンガン焼いている。うまそうで腹が減る。
次は映画。おいおい盗撮じゃないのか。
それで競馬。どうやら終わった直後らしくて勝った馬が何かをモニターで確認しているらしい
最後に画面がガタガタ揺れながら走っている?様子。走っている様子から、何かから逃げているのか? ホラー映画としてみるとあまりにも下手くそで、何かから追われているのならその何かぐらい見せて欲しいなんて思う。
それで終わる。『七日間』ってタイトルなのにシーンが六つしかなかった。
「よくわかんねーの」
そう思って自分の録画した懐かしの映画を見てその日はダラダラ過ごす。
次の日、友人にラーメン屋に誘われてデジャブを感じる。
そのまた次の日はパチンコ。お次は映画。その時に俺は知る。
あ、ビデオで見た映画だ、ってかこの映画の公開、今日からじゃん!
「明日競馬行こうぜ!」
「ん? いいけどお前競馬なんてやってたっけ?
「明日は勝てる気がするんだな」
そう言って、俺は友人と競馬に行く約束をする。
これで明日の勝ちは決まったようなものだ。よくわからないが未来が見えるビデオだなんて、なんともラッキーだ。〈了〉
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