第28話

 大石はテーブルに酒やつまみ、ピザを並べて愛奈の要望通りの映画を再生し始める。

 大石と愛奈はソファーに並んで座り、映画を見始める。


「何呑みますか?」


「じゃあ、ワインで」


「へぇ、保な…じゃない、愛奈さんってワインが好きんですね」


「はい、お酒で好きなのがワインで」


 大石は愛奈が買ってきたワインを開け、愛奈のグラスに注ぐ。

 大石は缶ビールの口を開け、自分のコップに注いで愛奈の方を向いて乾杯する。


「じゃあ、乾杯」


「はい」


 カンとグラス同士がぶつかる音がした後、大石と愛奈はグラスに口をつけてそれぞれの飲み物を飲む。


「はぁぁぁ……美味い……」


「うふふ、大石さんなんかおじさんっぽいですよ」


「俺はもうおじさんって年ですよ、愛奈さんみたいに若くないんです」


「あら、ごめんなさい」


 愛奈はそう良いながら、大石の肩に頭を乗せる。

 

「あの……もう酔ったんですか?」


「酔ってったら何かするんですかぁ?」


「しませんよ、映画もまだまだ序盤なんですから」


 大石達の目の前に置かれたパソコンには、映画の最初の方が流れたいた。

 しかし、愛奈は映画には目もくれず、大石の顔ばかりに視線を向けていた。


「大石さん……」


「なんですか?」


「私達……付き合ってるんですよね?」


「ま、まぁ……そうなりますね」


「えへへ……ですよねぇ~」


 愛奈はそう言って、大石の腕にしがみつく。

 大石はそんな愛奈を止めるでもなく、ただただなされるがままだった。

 二人が映画を見ながら、テーブルの上の酒や食べ物をつまんでいた。

 時間も経ち、映画もクライマックスに近づいてきた。

 ラブロマンスだけあって、キスシーンやベッドシーンも多々あり、その度大石は一人で気恥ずかしさを感じていた。

 対する愛奈は目をキラキラさせて映画を見ていた。

 そして、ついに映画が終わり大石は愛奈に声をかける。


「面白かったですね」


「そうですね、最後はやっぱり付き合うんですね」


「まぁ、映画ですからね」


「絶対にハッピーエンドになるなんて、映画は羨ましいですね」


「現実は甘くないってことですよ」


 時刻は夜中の12時を回ろうとしていた。

 二時間映画を見ながら酒を飲んでいたが、大石は愛奈がいるからかいつもより酒を飲まなかったので、全く酔っていなかった。

 対する愛奈は顔を真っ赤にし、大石の腕にくっ付いて離れない。


「そういえば、今日ってクリスマスでしたね」


「そうですよぉ~、知ってますかぁ~、クリスマスのとある時間帯は恋人たちが一年間で一番愛し合う事が多い時間帯らしいですよぉ~」


「それくらい知ってますよ」


「大石さぁ~ん、私たち付き合ってる男女ですよねぇ~?」


「………しませんよ」

「ふぇ!? ど、どうしてですかぁー!」


「そんな酔っぱらった状態の女性と行為に及ぶほど、俺は落ちぶれちゃいません」


「む~……大石さんにお酒を飲まされば、酔った勢いで既成事実を作れると思ったのにぃ~」


「何恐ろしい計画を立ててるんですか……」


 大石は結構お酒は強い方だった、言うまでもなく社会人として酒の席に呼ばれることは愛奈と比べて遥かに多く、呑みなれていた。

 故に自分の許容量というものも自覚しており、気を付けて飲んでいたのだ。


「はぁ、まぁそんな事だと思いましたよ」


「ぶー! うぅー! うぅー!」


「……あの、痛いです」


 愛奈は頬を膨らませながら、大石の脇腹を小突いてくる。

 実際そこまで痛くはなかったが、何回も脇腹を攻撃してくるので地味に痛みが蓄積されていた。


「愛奈さんはもう眠いんじゃないですか? もう寝たらどうです?」


「やです!!」


 愛奈はそう良いながら、とうとう大石の膝の上に乗って来た。

 大石の膝の上に抱きつくような形で乗ると愛奈は大石の顔をジーっと見つめる。


「な、なんですか?」


「ズルいです」


「なにがですか?」


「なんで大石さんは酔ってないんですか!」


「それは、食べることに集中していたからで……」


「そう言う事じゃないですよ! 早く酔っぱらってください! 折角勝負下着で来たのに!!」


「それは関係あるんですか……」


 大石は愛奈の話を聞きながら、愛奈を自分の膝の上から引きはがそうとする。

 しかし、愛奈は離れようとしない。

 それどころか、自分の来ているブラウスのボタンを一つ一つ外し始める。


「いや、何してるんですか!!」


「ん……私の下着を見れば……大石さんが興奮して私の事を襲ってくれるかと思って……」


「いや、そんな事するわけないでしょ!」


「ん~離してください~!!」


 大石は愛奈の服を脱ぐ手を止める。

 しかし、愛奈は服を脱ぐのをやめようとしない。

 仕方なく、大石は愛奈を抱きかかえる。


「よいしょっ」


「ふぇっ!? な、なんですか? まさかやっとやる気に!!」


「ベッド貸すので、愛奈さんはもう寝て下さい、俺はもう少し飲んでから寝ます」


「なんでですかぁー! ぶー!!」


 大石は愛奈をベッドに寝かせると、ソファーに戻り一人で酒を飲み始める。

 愛奈はそれでもくじけることなく、今度はあらかじめ服を脱いで下着姿になり、大石の座るソファーに戻る。

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